医学用語で、食べたり飲んだりすることを摂食嚥下と言います。
食べることの機能(摂食嚥下機能)は身体の様々な器官の働きによって可能となります。
離乳食の時期は、まさにその摂食嚥下機能の獲得時期でもあります。
今日は正常発達における離乳食の過程を見ていきます。
離乳食の進め方と言っても、その方法はお子さんにより様々です。
しかしながら、十人十色とは言っても何か基準がないと話が進みませんね。
離乳食の進め方として信憑性が高いものの1つに、厚生労働省による離乳食のガイドラインがあります。
各種研究データや専門家の意見を参考に政府が公開しているガイドラインにです。
今回はこれらを中心に扱っていきます。
離乳食は生後5,6カ月~1歳6カ月頃までの期間に行われます。
つまり1年くらいかけて文字通り離乳していくわけです。
離乳食の期間はずっと同じ形状・同じ頻度で食べさせるわけではなく、段階を踏んで少しずつ進めていきます。
以下で詳しくみていきます。
この時期が離乳の開始時期になります。
離乳の開始時期には、
なめらかにすりつぶした状態の離乳食を与えます。
具体的には、お粥をさらにすり鉢などでつぶした「つぶしがゆ」や、野菜や魚をすりつぶしたものなどが該当します。
始める順番としては、
お米 → 野菜・果物 → 豆腐・白身魚
といった段階です。
これらを1日1回1さじずつの頻度から始めていきます。
ちなみに、離乳食は始まったもののまだまだ授乳は必要な時期です。
離乳の開始時期は、ミルクは子供が欲しがればこれまで通り特に制限なく与えます。
離乳の開始から1カ月ほど経った生後7,8カ月。
この時期を離乳の進行時期(前半)とします。
離乳の進行時期(前半)では舌でつぶせる程度の固さの離乳食を与えます。
つぶしがゆからお粥へ移行していきます。
細かい過程としては、
つぶしがゆ → 粗いつぶし → つぶさない(お粥)
といった流れです。
離乳開始時期の離乳食に加えて各種野菜や豆類、海藻。
固く茹でた卵黄や、脂肪分の少ない鶏肉やチーズ。
子供の様子を見ながら少しずつ食材のレパートリーを増やし、いろんな味や舌触りを楽しむ時期です。
ちなみにまだ牛乳は与える必要はありません。
頻度は1日2回で、食事という生活リズムをつけていく時期でもあります。
食べる種類も量も増えていくので、ミルクは食後にあげましょう。
先にミルクを上げてしまって満腹で、離乳食が入らないということがないように。
母乳は特に制限なく、子供が欲しいままあげましょう。
育児用ミルクは1日3回程度に、ある程度頻度を調整していきます。
離乳の進行(後半)にあたります。
離乳食の形態は歯ぐきでつぶせる程度の固さ。
離乳食の量が増え、相対的にミルクの量が減っていく時期です。
それに伴い鉄分が不足しやすい時期でもあります。
鉄分を補う目的もあり、赤身の魚や肉をレパートリーに加えていきます。
市販のベビーフードが使えるのもこの時期です。
お粥から徐々に軟らかいご飯(軟飯)へ移行していきます。
頻度は1日3回にしてリズムをさらに整えていきます。
ミルクについては前半と同様です。
母乳は特に制限せず、子供が欲しいままあげましょう。
育児用ミルクは1日3回程度に、ある程度頻度を調整していきます。
ただしいずれも食後が原則です。
離乳の完了時期にあたります。
ミルクではなく食事で必要な栄養の大半をとれるようになる時期です。
食事形態は歯ぐきで噛める固さです。
軟飯から普通のご飯に徐々に移行します。
頻度は1日3回と、必要に応じて1日2回程度の間食を行います。
ミルクの頻度は減っていくでしょうが、必ずしもこの時期に完全にやめないといけないわけではありません。
しかしながら離乳食の妨げにはならないように気をつけましょう。
手づかみでいいので、自分で食べる経験を積む時期でもあります。
以上のように離乳食は主に4つの段階で進んでいきます。
目安として月齢も記載しましたが、あくまで目安。
お子さんの個々の様子を見ながら判断していきましょう。
内容からもわかる通り、
離乳食の時期は食べることだけでなく「食べる習慣」をつけることが大切な時期でもあります。
その他の記事
嚥下における「相」と「期」とは? 摂食嚥下運動の過程の評価
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【引用・参考サイト】
『Ⅱ離乳編』(厚生労働省)2018年1月6日検索