本の対象年齢考察

絵本「100万回生きたねこ」は何歳向け?小児発達学より

公開日:2018年9月17日

絵本「100万回生きたねこ」を小児発達学の側面からレビューします。

「100万回生きたねこ」の対象年齢はいくつくらいでしょう?
 
 

 
 
 

1. 「100万回生きたねこ」は何歳向け?

ベストセラーであり、絵本でありながら深い内容で大人にも人気のある「100万回生きたねこ」

改めて読んだことがない人でも、タイトルは聞いたことがあったりなんとなく内容を知っている人も多いのではないでしょうか?

さて、
「100万回生きたねこ」の対象年齢って何歳くらいなのでしょう?

もちろん絵本は楽しんで読めれば何歳からでもいいのですが、強いて挙げれば、「100万回生きたねこ」はどんな点が子供の成長を促すのでしょう?

「100万回生きたねこ」は6歳前後くらいから読み応えのある絵本です。

以下、もう少し詳しく。
 
 
 

2. 「100万回生きたねこ」とは?(あらすじ)

あるときは王様の飼い猫。
あるときは船乗りの猫。

生まれ変わりを繰り返し、様々な「猫」として生きるとらねこがいました。

とらねこは100万回生まれ変わり、100万回死にました。

あるとき、とらねこは野良猫として生まれ変わり、白猫を愛しました。

愛する白猫が死んでしまうと、とらねこは悲しみのあまり泣き続け、最後は死んでしまいます。

それ以来、とらねこが生まれ変わることはなくなりました。
 
 
誰かを愛することや、最愛の人を失うこと。

その喜びや悲しみは私達に生きる意味を教えてくれます。

「生きる」こと「死ぬ」こと、「愛する」ことなど、

子供だけでなく大人も読みごたえのあるベストセラー絵本です。
 
 
 

3. 「100万回生きたねこ」の対象年齢を考える

「100万回生きたねこ」においてキーワードとなるのがやはり「死」「生まれ変わり」でしょう。

子供は「死ぬ」ことや「生まれ変わる」ことをどのように捉えているのでしょう?

調布市教育相談所の仲村照子氏の論文によると、

「死」という概念をある程度理解できるのは6~8歳頃とされています。

また、6~8歳以降、子供は生き物が「生まれ変わる」という発想についてより創造力が働くようになっていきます。
 
 
同論文参考にすると、

「死の概念」がまだ曖昧なうちから子供に「死ぬこと」をリアルに教えることは不安を植えつける可能性がありますし、

逆にある程度「死の概念」を理解している子に「○○さんは遠くに行っちゃったんだよ」と曖昧に答えることは混乱を招く可能性があるとしています。

「死」というのはデリケートな話題で大人も説明に困りますが、その子の理解状況に合わせて話すことが重要なようです。
 
 
このように考えると、「100万回生きたねこ」は普段はあまり話す機会のない「死」という概念を子供と話すいい機会になる絵本ですね。
 
 
 

4. まとめ

絵本は自由に読んでいいものです。

字が読めなくても、親御さんが読み聞かせてあげれば充分楽しめます。
内容だって、その子なりの解釈で自由な発想を楽しめばいいのです。

だから絵本に対象年齢というものは厳密にはないのかもしれません。

しかし一方で、

どんな絵本をどのように読むか、どんな意図の下で読むかで子供の成長を促すきっかけになります。

「100万回生きたねこ」は普段はあまり話す機会のない「死」という概念を子供と話すいい機会になる絵本です。

一般に子供は6~8歳頃から大人と同じような「死の概念」の理解が可能になり、その後「生まれ変わり」や「お盆に会える」といった霊的・精神的な考えが豊かになっていきます。

上記を踏まえると、

「100万回生きたねこ」は6歳前後くらいに読むと、「生きること」「死ぬこと」といった概念をを学ぶよいきっかけになりそうです。

 
 
 

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6. 参考資料

佐野洋子『100万回生きたねこ』講談社、1977年

『子どもの死の概念』(J-STAGE)2018年9月15日検索

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