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発達障害者の「自分がわからない」感覚

公開日:2024年12月27日


 
 

「自分がわからない」感覚

 自閉症スペクトラム障害(ASD)の人は、自己理解について定型発達の人より理由が曖昧であるケースが多いです。

 ここで言う「自己理解」とは、自分がどんな人間か考え言葉にすることです。

 自閉症スペクトラム障害の人は、「自分は変わっている」と漠然と感じつつもそれをうまく自分の中で咀嚼できていない傾向があります。

 また、自己理解の材料として自己と関係ないことの言及が比較的見られます。

 
 
 

解説

発達障害と自己理解の研究

 日本発達心理学会の論文に、自閉症スペクトラム障害者の自己理解について調査・研究したものがあります。
 定型発達の人と発達障害者を対象に、自己理解について答えてもらいその回答傾向を分析したものです。

 「自分はどういう人間なのか」自覚できることは、アイデンティティを確立する上で重要な要素の1つでしょう。

 また、自己理解に至る理由がどのようなものかは、その人を知る上で重要な手掛かりとなります。
 例えば自分の長所を対人関係の中から見出しているのか、それとも容姿や社会的地位から見出しているのかでは価値観が大きく異なるでしょう。

 そして自閉症スペクトラム障害者の場合、定型発達と比べて自己理解に特徴的な要素があると考えられています。

 
 

自己理解の曖昧な理由

 定型発達においても自閉症スペクトラム障害においても、自己理解について理由が曖昧な言及はないことはありません。

 しかしそういった分類不可能の傾向が、定型発達と自閉症スペクトラム障害では異なる様子がうかがえます。

 定型発達の場合、自己理解の曖昧な理由は「普通だから」など不十分な言及が多いです。

 一方で自閉症スペクトラム障害の人は、「自分がわからない」といったことが背景となっているケースが見られます。

 これは自閉症スペクトラム障害の人が「自分は変わっている」「他の人とは違う」と漠然と感じつつも、それを統合しきれていないことが考えられます。

 
 

自己と関係のない理由

 自閉症スペクトラム障害の人の中には、自己理解において自己と関係ない事柄を言及する人がいました。

 例えば「どんな人間になりたいですか?」という質問に対して「戦争がなくなってほしいです」などです。

 繰り返し質問をしても答えが同様であったため、質問意図を理解していないというよりは、本人の中で社会情勢や社会の規律が自身と密接に関わっている可能性も考えられます。

 もちろん全ての自閉症スペクトラム障害の人に当てはまるわけではありませんが、社会情勢や周囲の環境のの安定が自身の安定に非常に関係しているケースがあるのかもしれません。

 
 
 

発達障害と自己理解

 
 
 

参考資料

滝吉美知香、田中真理(2011)『思春期・青年期の広汎性発達障害者における自己理解』(一般社団法人 日本発達心理学会)2024年9月14日閲覧

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