思春期

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発達障害者の自己肯定感とこだわり

公開日:2024年12月3日


 
 

自己理解と行動スタイル

 自閉症スペクトラム障害(ASD)の人にとって、その人の興味・関心や能力を評価することは自尊感情を維持するために重要であると考えられます。

 この背景には、定型発達と比べると自閉症スペクトラム障害の人は、対人関係を介しない行動スタイルにおいて自己を肯定的にとらえる傾向があるからです。

 つまり、「自分1人ですること」に対して定型発達の人よりも充実感を感じる傾向があると考えられます。

 
 
 

解説

発達障害と自己理解の研究

 日本発達心理学会の論文に、自閉症スペクトラム障害者の自己理解について調査・研究したものがあります。
 定型発達の人と発達障害者を対象に、自己理解について答えてもらいその回答傾向を分析したものです。

 「自分はどういう人間なのか」自覚できることは、アイデンティティを確立する上で重要な要素の1つでしょう。

 そして自閉症スペクトラム障害者の場合、定型発達と比べて自己理解に特徴的な要素があると考えられています。

 
 

自己理解のための要素

 自己理解を行うための要素は複数あると考えられます。

 例えば、内面や外見、社会的地位などです。
 また、対人関係の中での自分がどのような立ち位置かも1つの要素でしょう。
 あるいは、どのような行動を普段から行っているかといった行動スタイルも要素の1つです。

 
 

肯定的自己理解と否定的自己理解

 例えば「一人で本を読むのが趣味」というのは対人関係を含まない行動スタイルと言えます。
 そしてこれを「あまり人と関われていない」と否定的にとらえるのか、「読書にとても集中できる」など肯定的にとらえるかは人それぞれでしょう。

 自閉症スペクトラム障害の人の場合、対人関係を含まない行動スタイルについて肯定的にとらえる傾向が見られました。

 自分のこだわりや趣味について、楽し気に活き活きと語る例が比較的見られたそうです。

 
 

こだわりに対する否定

 しかしながら、自分の好きな事に活き活きとする一方で、それを完全には肯定できない面も見られたようです。

 自閉症スペクトラム障害の人はこだわりや好きなことが場所次第では不適切なものとして周囲から抑圧された経験が少なくありません。

 こだわりを発揮したり趣味に没頭してもいい場所・時間をわかりやすく設定することは、自閉症スペクトラム障害の人の社会への適応を広げ肯定的な自己理解に寄与すると考えられます。

 そしてこれらは、二次障害の予防にもつながるでしょう。

 
 
 

発達障害と自己理解

 
 
 

参考資料

滝吉美知香、田中真理(2011)『思春期・青年期の広汎性発達障害者における自己理解』(一般社団法人 日本発達心理学会)2024年9月14日閲覧

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