自閉症スペクトラム障害の集団活動の苦手さの具体例
発達障害あるいは自閉症スペクトラム障害(ASD)児・者は、しばしば集団活動・集団遊びが苦手な場合があります。
例えば運動自体は好きでも、複雑なルールの下で行う集団スポーツは苦手なケースなどがあります。
またこういった背景から、集団活動に苦手意識を持つ可能性もあります。
以下、発達障害児の集団活動の苦手さについて、事例も交えながら見ていきます。
解説
自閉症スペクトラム障害児の運動の不器用さ
脳の非進行性の機能障害が推定される発達障害児者は、体性感覚系の異常さを伴うケースがあり、これにより運動面の不器用さを呈する場合があります。
あるいは、発達性協調運動障害などを合併するケースが考えられます。
また、複雑なルールの理解や対人関係の苦手さがあるケースもあります。
これにより、運動自体は好きでも(その不器用さを笑われる・ルールを理解できず周囲から責められるなどから)集団活動に苦手意識を持つ場合があります。
日本自閉症スペクトラム学会の論文に、自閉症スペクトラム障害児者の運動発達について調査したものがあります。
自閉症スペクトラム障害の子供を養育する保護者へのアンケート結果から、運動面の不器用さの事例をいくつか要約していきます。
不器用さの具体例
- 集団で行う、複雑なルールのあるゲームが苦手。
- 集団で行うゲームにおいて、器用な動きが必要なものが苦手。
- 周囲から文句を言われるのが嫌で、集団遊びに苦手意識がある。
- 一人でできる運動は好きだが、ルールのある運動は苦手。
- グループでのダンスで周囲と同じように動くことが苦手。
- ダンスの細かい動きが苦手なため、覚えることや上手くできないことが負担となる。
- 興味のあるものに集中し、周囲とは別行動をとってしまう。
- 遠足などで迷子になってしまう。
- リレーやかけっこにおけるコース取りの理解が難しい。
- 走るのは速いがリレーにおけるバトンの受け渡しが苦手。(バトンをうまく受け取れない、バトンを誰に渡すか判断することが苦手)
- リレーにおけるコーナートップのルールの理解が難しい。(コーナートップとは、第3コーナー通過時点の順位で、次走者の内側に並ぶ順番を決めるルールのこと)
- 運動に苦手意識があり、人に笑われることが怖く避けてしまう。
いずれもあくまで例であり、上記のような所見があれば必ず発達障害というわけではもちろんありません。
同時に、発達障害であっても必ずこのような傾向があるわけではありません。
参考資料
是枝喜代治(2014)『ASD(Autistic Spectrum Disorder)児者の初期運動発達の偏りに関する研究 保護者へのアンケート調査を基に』(NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会)2024年12月21日閲覧