母乳で育てたほうが子供のアレルギーは予防できるのでしょうか?
今日は授乳とアレルギーの関係性について。
1. アレルギーに対する母乳の効果
2. アレルギーと授乳の関係性
2-1. 母乳と粉ミルク
2-2. 家族歴がない場合は?
2-3. 母乳・粉ミルク・アレルギー用ミルク・豆乳の効果の差
3. アレルギーに対する基本方針
3-1. 既往歴や家族歴に注意する
3-2. 自己判断の除去食は危険
4. まとめ
5. その他の記事
6. 参考資料
1. アレルギーに対する母乳の効果
アレルギーの家族歴がある場合、
生後6カ月まで母乳あるいはアレルギー用ミルクで栄養摂取を行うと、5歳までの喘息や湿疹などのアレルギーの発症に予防効果があります。
ちなみに家族歴とは「その疾患になったことのある家族がいるかどうか」です。
以下、その根拠をみていきましょう。
2. アレルギーと授乳の関係性
子供のアレルギーに関する信憑性のある情報として、厚生労働省の授乳・離乳の支援ガイドがあります。
これは各種文献を基に国が発表している離乳食の方針です。(リンクは最後のほうの「参考資料」にあります。)
以下、上記の資料からアレルギーに関する情報をまとめます。
2-1. 母乳と粉ミルク
アレルギー疾患家族歴がある子供に対して、
・4カ月間、完全母乳で育ったグループ
・調製粉乳(一般の粉ミルクのこと)で育ったグループ
で比較しました。
結果、完全母乳で育ったグループのほうが1年間のアトピー性皮膚炎の罹患率が低かったです。
しかしながら、長期的なアレルギー予防についてははっきりとした効果は出ていません。
2-2. 家族歴がない場合は?
一方で、完全母乳が常に効果があるかと言えばそうではないようです。
アレルギーの家族歴がない場合、完全母乳にしてもお子さんのアレルギーや喘息の予防には効果がないという研究報告が多数を占めています。
家族歴の有無がポイントのようですね。
2-3. 母乳・粉ミルク・アレルギー用ミルク・豆乳の効果の差
・母乳、一般の粉ミルク、アレルギー用粉ミルク、豆乳。
アレルギーのリスクのあるお子さんに対して、上記の4つは効果に差があるのでしょうか?
生後6カ月までの栄養摂取を、
・完全母乳
・母乳 + 一般の粉ミルク
・母乳 + アレルギー用粉ミルク
・母乳 + 豆乳
で比較しました。
結果、完全母乳とアレルギー用ミルクのグループには、アレルギーの予防効果がありました。
具体的には5歳までの喘息や湿疹などのアレルギーの発症に予防効果があったそうです。
また、粉ミルクとアレルギー用ミルクを比較すると、
アレルギー用ミルクの方が牛乳アレルギーやアトピー性皮膚炎の発症率は低下しました。しかし喘息については差はありませんでした。
完全母乳とアレルギー用ミルクでは、アレルギーの予防効果に差はありません。
豆乳については粉ミルクと予防効果に差はありません。
3. アレルギーに対する基本方針
アレルギーというのは非常に個人差が大きいものです。
そのためアレルギーに関してお子さんに「何をすればいいのか」というのは千差万別です。
しかしながら、基本方針というものはあります。
以下、見ていきましょう。
3-1. 既往歴や家族歴に注意する
アレルギーが発症した場合は速やかに医師に相談しましょう。
また、自分や家族の誰かにアレルギーをもっている人がいる、あるいは以前アレルギーだった場合も念のため医師にその旨を伝えましょう。
家族歴を把握することで子供のアレルギー予防につながります。
3-2. 自己判断の除去食は危険
人間は雑食性の動物です。つまりいろんな物を食べて栄養を摂って生きていく動物です。
アレルギーの基本方針は除去食。つまり対象の食物を食べないということです。
けれど素人判断の除去食は子供の成長・発達を損なう恐れがあります。
除去食を行う場合は必ず医師の指示を受けながら行いましょう。
4. まとめ
以上からまとめです。
アレルギーの家族歴がある場合、生後6カ月くらいまではできるだけ完全母乳で育てたほうがアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の予防につながります。
しかしながらこれらが研究結果として証明されているのは5歳くらいまでで、完全母乳で育てたからといってその子が一生アレルギーのリスクを予防できるわけではないようです。
母乳は粉ミルクと異なり様々な栄養が含まれているのでできるだけ母乳を飲ませることが推奨されています。
しかしながら、ことアレルギーに関しては母乳とアレルギー用ミルクでは予防効果に差はありません。
一般の粉ミルクとアレルギー用ミルクを比較すると、アレルギー用ミルクの方が牛乳アレルギーやアトピーの予防効果はありますが、喘息について効果に差は見られません。
いずれにせよ、授乳期間中の栄養摂取は慎重に行うべきですが、その判断は医師の指示の下で行うことが望ましく、自己判断は避けた方がいいでしょう。
5. その他の記事
6. 参考資料
『小児の脆弱性の要因』(環境省)2018年4月30日検索