吃音の特徴と傾向
吃音の症状は言葉の最初、つまり語頭で生じるケースが大多数であると考えられています。
語頭で吃音が生じるとは、例えば「かばん(鞄)」という単語に対して「か、か、か、かばん」と言ってしまうような状態です。
ただしこれは語頭の音が吃音の対象になっているかというと厳密には異なり、
吃音は語頭から次の音に移行するときに生じると考えられています。
解説
吃音の言語学・音声学的特徴
例えば「かばん」という単語はローマ字で書くと「kaban」です。
専門的な音声記号とは若干異なりますが、いずれにせよ「かばん」という単語の発音は「k→a→b→a→n」の順で発音していきます。
「k」は奥舌を動かす子音であり、「a」は母音です。
吃音が最も生じやすいのは、母音から閉鎖音に移行するときです。
閉鎖音とは唇を閉鎖する「p」や「b」、舌を使う「k」「t」などです。
このため「かばん(kaban)」という単語は「ka→ba」に移行するときが最も吃音が生じやすいと考えられます。
吃音が生じにくい音の移行
逆に吃音が比して少ない音の移行は「母音から鼻音」や「母音から母音」です。
鼻音とは「n」や「m」などです。
吃音症状発生ポイントは音の移行
吃音を持っている人で「『あいうえお』でよくどもる」と思っている人は少なくありません。
しかしながらここまで述べたように、吃音症状の発生ポイントはその音ではなく移行する音の組み合わせであると言えます。
「おばあさん」という単語で「お、お、お、おばあさん」となってしまうのは「お」が苦手というわけではなく、「お」という母音から「ば」という閉鎖音に移行するゆえに生じている可能性があります。
このため人にもよりますが「おうえん(応援)」といった「お」のあとに「う」など母音が続く場合は特に吃音が生じないことがあります。
補足記事
参考資料
『吃音症の遺伝学』(日本小児耳鼻咽喉科学会)2021年11月20日検索