社会的失言検出課題とは?
社会的失言検出課題とは、心の理論における誤信念課題の1つです。
文章を聞いてもらい、登場人物達の言動に「失言」があるか否か、ある場合はどのようなものかを答える課題です。
失言を通してその人の状況を見る力や他者の心を推察するいわゆる誤信念の理解を見ます。
誤信念課題の中でも児童や成人を対象とする、難易度が高めの誤信念課題が社会的失言検出課題です。
誤信念課題における失言課題の位置づけ
社会的失言検出課題は誤信念課題の中でも比較的難しい課題と考えられます。
誤信念課題の中で最も簡単なものが、「サリーとアン課題」をはじめとした一次的誤信念課題です。
一次的誤信念課題は「Aさんは○○と思っている」といった構造の理解が問われます。
これが複雑になったのが「アイスクリーム課題」などをはじめとする二次的誤信念課題です。
二次的誤信念課題は「Aさんは○○と思っているとBさんは思っている」という入れ子構造の関係性の理解が必要になります。
文献により若干解釈は異なりますが、
定型発達において一次的誤信念課題は5歳前後、二次的誤信念課題は6歳前後におおむね正答できるようになります。
そしてこれよりさらに発展し、人間関係の微妙なニュアンスである「気まずさ」や「失言」について問われるのが社会的失言検出課題です。
社会的失言検出課題は物語の難易度設定にもよりますが、おおむね10歳前後に獲得されると考えられています。
社会的失言検出課題の例
社会的失言検出課題は例えば以下のような物語において、失言の有無や内容を問います。
マミは新しい家に引っ越し、リビングに新しい好みのテーブルを買いました。
後日、マミや友人であるユキを新しい家に招待しました。
マミは「新しい家はどうかな?まだ全部そろってないけど、家具も少しずつ買い換えようと思ってるの」と言いました。
ユキは「素敵な部屋ね。けど、テーブルが部屋に合ってないかも。新しい物を買ってみるといいかもね」と言いました。
おわりに
失言課題は問題内容だけでなく、その設問の構成も非常に大切になってきます。
そのため設問の設定や一次的・二次的誤信念課題との違いも含め、下記の補足記事を参照していただけると幸いです。
補足記事
参考資料
『「心の理論」の二次的信念に関わる再帰的な心的状態の理解とその機能』(京都大学学術情報リポジトリ)2020年10月2日検索
『「心の理論」は必要か』(学習院)2021年1月14日検索
『高機能自閉症、アスペルガー症候群の心の理論の発達 : 失言課題成績の定型発達児との比較を通して』(公益財団法人 明治安田こころの健康財団)2021年1月14日検索
『児童期における見かけの泣きの理解の発達 : 二次的誤信念の理解との関連の検討』(日本発達心理学会)2020年10月2日検索
『自閉スペクトラム症者における「気まずさ」の認識に関する探索的研究』(日本発達心理学会)2020年10月2日検索
『心の理論の神経基盤に関する研究動向』(明星大学)2021年1月14日検索
『嘘を求められる場面での幼児の反応 : 誤信念課題との比較から』(日本発達心理学会 J-STAGE)2020年9月7日検索
『自閉症児への「心の理論」指導研究に関する行動分析学的検討』( 心理学評論刊行会 J-STAGE)2020年9月7日検索
『内省能力と二次的信念の理解との発達的関連 : 再帰的な思考の役割から』(日本発達心理学会)2020年10月2日検索
『児童期における再帰的な心的状態の理解』(日本教育心理学会)2020年10月2日検索