誤信念とは?
誤信念とは、「人は状況によって正しいときもあるし間違うときもある」ということを理解できる能力です。
例えばびっくり箱を持っていて、それを誰かに開けてもらうとします。
相手がびっくりするだろうと私達は期待します。
それはなぜかと言えば、
自分はこの箱がびっくり箱だと知っているけれど、相手が箱の中身がびっくり箱だとは「知らないと知っている」からです。
つまり相手がこの箱を「びっくり箱ではない」という「誤って信じていること」を理解できます。
誤信念の理解とは言い換えると、
自分の情報と相手の情報、
自分の感じ方と相手の感じ方を
切り分けて理解できる能力のことです。
誤信念の解説
誤信念の理解は「心の理論」の理解の中核を成す概念です。
心の理論とは、相手の立場に立って相手の心情を理解・予想できる力のことです。
この相手のことを理解・予想するためには誤信念の理解が必要です。
先ほどのびっくり箱の例でいうと
「なんでこの人は箱の中身がびっくり箱だとわからないのだろう」
と考えるのはいささか相手の立場に立てていません。
なぜなら自分は箱の中身を確認しているけれど、相手は箱の中身を知らないからです。
そもそも持っている情報が異なるわけです。
心の理論とは状況から適切に「Aさんは○○だと思っていると思う」とわかる能力であり、そのためには誤信念の理解が必要不可欠です。
誤信念課題の例
誤信念の理解度を見る問題を「誤信念課題」と言います。
誤信念課題は有名なものからローカルなものまで様々です。
一番有名なものの1つが「サリーとアン課題」と呼ばれるものです。
内容としては、
サリーとアンが部屋で遊んでいます。
サリーはボールをカゴの中に入れて部屋を出ました。
サリーがいない間に、アンがボールを別の箱の中に移します。
サリーが戻ってきてボールを探すとき、どこを探すでしょう?
というものです。
この答えは「カゴを探す」になります。
サリーとアン課題を正解するには、状況を俯瞰して見ている「自分」という視点ではなく、サリーという立場になって考えないといけません。
おわりに
誤信念とは他者は他者の情報に基づいて物事を判断するということを理解できる能力です。
サリーとアン課題などで見ると簡単に思える誤信念理解ですが、日常生活の複雑な人間関係を通してみるとなかなか興味深い概念です。
よく人は「○○なんてありえない」と他者を批判することが珍しくありません。
これはある意味で相手の立場を想像できていないことの表れでもあります。
心の理論も誤信念も、例にすると平易な概念ですが、実際にそれを人間関係に照らし合わせると意外と難しいものです。
参考資料
『嘘を求められる場面での幼児の反応 : 誤信念課題との比較から』(日本発達心理学会 J-STAGE)2020年9月7日検索
『自閉症児への「心の理論」指導研究に関する行動分析学的検討』( 心理学評論刊行会 J-STAGE)2020年9月7日検索