遺伝率とは?
遺伝率とは、その集団の中で、人々に生じた差について、遺伝で説明できる割合のことです。
親の性質が子に遺伝する確率ではありません。
遺伝率は個人を見るものではなく、集団の傾向を見るものと言えます。
解説
遺伝率の誤解
例えば「遺伝率80%」と聞くと、直感的に「80%の確率で親から子に遺伝するもの」とイメージしますがこれは誤りです。
冒頭で述べた通り、遺伝率は個人の能力を説明するものではなく、集団の個人差(分散・ばらつき)を示すものです。
例えば遺伝率80%の能力「A」があったとします。
世の中には能力Aが高い人もいれば低い人もいます。
ではなぜこの能力Aが高い人もいれば低い人もいるのでしょうか。
その理由には様々な要因が考えられます。
能力Aを練習する環境かもしれませんし、生活習慣の違いかもしれません。
そして能力Aの場合、その要因の80%を占めるのは、遺伝ということになります。
このように遺伝率は集団の中のばらつきを対象とします。
このため個人レベルで見ると、親から子に能力Aの高さが引き継がれる確率は80%になるわけではありません。
遺伝と環境
遺伝率が高いからといって、環境を整えることが無意味というわけではありません。
遺伝率が高いことと、環境によってその能力が伸びやすいか否かはまた別です。
例えば複数名がまったく同じ環境で能力を磨いた場合、全員が伸びるので結果としてそれぞの能力差は遺伝による差になってしまいます。
しかし実際の社会では環境や努力が人それぞれ違うことが多々あります。
むしろ生活環境や境遇がまったく同じというケースのほうが少ないのではないでしょうか。
このように考えると、最終的な成果は遺伝だけでなく、後天的な「教育」や「努力」が大切であるという見方もできます。
参考資料
『ワーキングメモリトレーニングと流動性知能』(日本心理学会)2022年8月6日検索
『遺伝率』(コトバンク)2022年8月20日閲覧