人類の知能が上がっている?
心理学者であるジェームズ・R・フリン氏によると、人類のIQ(知能指数)は年々上昇していると考えられています。
具体的には、例えば知能検査の1つであるウェクスラー式知能検査において、その数値は1年でおよそ0.3上昇している傾向が見られます。
解説
フリン効果とは?
フリン効果とは、人類の知能検査によるIQの平均値が年々上昇している傾向のことです。
心理学者であるジェームズ・R・フリンが提唱したことからフリン効果と呼ばれています。
フリン効果についてよくある議論が、IQの平均値は上昇しているがそれはそのまま「人類が賢くなっている」と捉えていいのかという議論です。
フリン氏をはじめ、人類のIQの平均値は上昇しているが、それが「賢さ」とイコールではないという見解が一般的です。
人は賢くなっているのか?
「現代の私たちは祖先に比べて考える能力が高いのか」という意味なら、そうではない。
「私たちは、経済発展にともなって増加する諸問題をはじめ、今日の複雑な世界に対処する知的能力を進化させてきたか」という意味なら、そうだ。ジェームズ・R・フリン『なぜ人類のIQは上がり続けているのか?』太田出版、2015より引用
フリン氏が述べるように、IQ上昇の背景には人類の脳機能向上というより現代文明に必要な抽象的思考能力に慣れていっている側面がうかがえます。
IQの補正
いずれにせよ、知能検査の平均値が時代によって異なるということは興味深い問題です。
同じ知能検査受けて同じ数値を出した人でも、今年受けた人が平均値と評価されと5年前に受けた人では平均以下と解釈される可能性もあるからです。
このことから、フリン氏は知能検査の結果を補正することを提唱しています。
具体的には、その知能検査が標準化された年と、知能検査を受けた年の差に0.3をかけた値で補正することをフリン氏は提唱しています。
例えば標準化されてから3年経った知能検査を受けた場合、0.3×3で0.9。
この値を検査結果から差し引いて補正します。
検査結果が100であれば100-0.9で、補正後は99.1になるといった具合です。
IQ補正と実際
知能検査は古くなればなるほど、数値の正確性が弱くなるというのは感覚的にもわかりやすいのではないでしょうか。
そのためIQを補正するという行為も必要性を感じます。
しかしながら実際に日本の医療や教育現場でIQを補正するケースはほぼありません。
これはフリン効果がまだ研究途中である点と、実際に補正する0.3という数字が適切か否かの議論がまだ途中であるためです。