IQ(知能指数)と人生の相関
人間の能力を示す値の一つに知能指数(IQ)があります。
なぜ人は人の能力を測るのかと言えば、それが将来の結果の予測に役立つからです。
IQが高ければ、知的労働で成果を出せるかもしれません。
IQが高い子供を教育すれば、そうでない子供を教育するより大きな成果がでるかもしれません。
しかし本当にそうでしょうか?
IQの信頼性はどのくらいのものなのでしょう?
ペンシルヴァニア州立大学の心理学者、ホイ・スエン氏の調査によると、
就学前の知能検査の結果と2年後の学業成績には40%の相関しかないとのことです。
これはつまり、
就学前(保育園・幼稚園)の時期に高いIQが測定されても、小学校で成績が良い確率は40%程度ということです。
子供のIQを図る意義
幼児期のIQ
この40%の相関というものは、なかなか皮肉なものです。
例えば昨今流行りの「お受験」。
幼稚園・保育園で選抜した私立の小学校の子供達の半数以上は、選抜に漏れたお子さんより学業成績がふるわない可能性があるのです。
これは幼児期のIQの計測が非常に不確かで誤差が出やすく、難しいことを示します。
TOEICなど様々なテストを開発しているアメリカの機関、エデュケーショナル・テスティング・サービスに所属しているロナルド・ロック氏によると、
IQをより正確に出したいなら小学校3年生、早くても2年生以降と述べています。
9歳の壁
ロナルド・ロック氏によると、幼い頃ほどその子自身の知的機能よりも家庭環境に恵まれているか否かの差がIQに出やすいそうです。
「9歳の壁」などという言葉もある通り、
ある程度IQが安定して計測できるのは小学校3年生以降と考えたほうがいいでしょう。
補足記事:9歳の壁とは?
IQを上げること
IQに関して興味深い情報の一つに、ペリー就学前プロジェクトがあります。
ペリー就学前プロジェクトはIQ的・環境的にリスクのあるお子さんを対象にした少人数教育プログラムです。
海外で行われ、幼児期のお子さんが対象となりました。
ペリー就学前プロジェクトは参加したお子さんの自制心や考える力を成長させ、結果として成功したプロジェクトなのですが、IQに関しても教訓が得られています。
ペリー就学前プロジェクトに参加したお子さんはそうでないお子さんよりIQが高くなりました。
しかし4年前後経つとIQがプロジェクトに参加していないお子さんと大して変わらなくなったそうです。
ペリー就学前プロジェクトから得られる教訓は、
一時的な介入によりIQを上げることはできなくはないが、介入をやめれば比較的早期にその効果はなくなるということです。
おわりに
IQは意外と不確かな値であることがわかります。
しかし、だから勉強しなくていいかというとそうではありません。
学校で勉強をする過程で身に着く考える力や自制心、集団行動の力などは生涯にわたって役立つ力です。
矛盾しますが、
IQを高めるような勉強の過程で身に着くIQ以外の力が人生には必要なのです。
このような、
「一見IQを高めるような勉強を通してそれ以外の力を伸ばす」ことを二重意図教育と言ったりします。