実行機能

英才教育における実行機能の必要性は?

公開日:2022年9月26日


 
 

実行機能の英才教育

 実行機能に問題を抱える子に対して、実行機能の支援を行うことに一定の意義はあると考えられます。

 一方で実行機能に問題のない子に対して、実行機能をより伸ばすいわゆる「英才教育」については慎重な判断が必要と言えます。

 実行機能に限らずですが、能力は単に伸ばせばいいというわけではなく、状況に応じた見極めが必要と言えます。

 
 
 

解説

実行機能の重要性

 実行機能とは「目標志向的な、思考、行動、情動の制御」を指します。
 つまり目的を達成するために自分をコントロールできる力のことです。

 類似した概念ですと近年では「非認知能力」と言われる力が注目されています。

 IQだけでなく、自分をコントロールする力、つまり自制心がより良い人生には必要であると予想できます。

 米国科学アカデミーの論文によると、10歳頃までの自己制御能力が32歳になったときの健康状態や薬物依存の程度、年収や社会経済的地位、犯罪歴などに関連する可能性が述べられています。

 
 

実行機能の訓練

 このため、アメリカなどを中心に実行機能に問題のある子供への支援が重要視されています。

 日本においても発達障害児などを中心に知的な側面だけでなく、実行機能についても客観的な評価を行うケースも少なくありません。

 
 

実行機能と英才教育

 このように、実行機能に問題のある子に対してアプローチを行うことは、その子の自己制御能力を促しより良い社会生活を促すことが期待できます。

 一方で、実行機能が年相応の子に対して、実行機能をより伸ばそうとする試みは理にかなっているのでしょうか。

 この点については慎重な議論が必要と考えられています。

 つまり、大人に比べて幼児期は実行機能が未熟ですが、それは発達過程において重要なことかもしれないからです。

 実行機能が未熟で自身の行動が制御できないことは、別の見方をすれば新しいことにチャレンジしたり興味を試せることでもあります。

 幼いうちからなんでも行動を自分で制御していては、新しいことを経験できる機会を逃すかもしれません。

 仮説の域ではありますが、いずれにせよ定型発達児の実行機能の平均以上の促進はその意義がまだ研究段階であり、慎重な解釈が必要と言えるでしょう。

 
 
 

参考資料

『実行機能の初期発達,脳内機構およびその支援』(心理学評論刊行会)2021年11月6日検索

『自己制御と実行機能の関係の検証に係る諸問題』(心理学評論刊行会)2022年5月5日検索

『知的障害児のプランニングと抑制機能の支援に関する基礎的・実践的研究』(東京学芸大学)2022年5月5日検索

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