自己経験に引き寄せた発話
会話において自分の話ばかりしてしまう子供の背景には、言葉の発達過程に伴い一過性のものや、自閉症スペクトラム障害などによるコミュニケーションの苦手さなどが考えられます。
前者は誰にでも見られる一過性のものであり、子供は言葉が増えていく途中では主観的な表現しかできないものです。
後者はソーシャルスキルトレーニングなどコミュニケーションの経験を積んでいくことが有意義でしょう。
解説
子供の言葉の発達の自己経験的発話
幼児期の言葉の発達を見る検査、とりわけ口頭での質問に対して口頭で答える力を見る言語検査に「質問―応答関係検査」というものがあります。
質問応答関係検査は、幼児期の会話能力を評価する検査の1つと言えます。
この検査によると、2歳後半~3歳頃は、自己経験的な発話が目立つと考えられています。
自己経験による発話とは、一般化した説明ができずに自分の経験に引き寄せたような表現をすることです。
例えば「お風呂の入り方ってどうするのかな?」という方法についての質問に対し、「私、お風呂入れるよ!」「ママと入っているよ!」など自分の経験を話してしまう場合などです。
2~3歳頃は自己経験に基づく発話が目立ち、大人から見れば「自分のことばかり話す」ように見えるかもしれません。
自己経験に基づく発話は言葉の発達とともに4歳頃には減少していくでしょう。(ただし難しい質問にはまだ見られるかもしれません)
ASDの一方的コミュニケーション
このように、自分のことや経験に引き寄せた発話は誰にでもある言葉の経過と言えます。
そしてこれらは幼児期後半には徐々に減少していき、より一般化した話を必要に応じてできるようになっていきます。
一方で自閉症スペクトラム障害などの子は、いわゆる「言葉のキャッチボール」が苦手な場合があります。
このような場合は会話を交互に続けるロールプレイングや遊びなど、コミュニケーションの経験を積むことが大切でしょう。
一例としては、おもちゃのマイクを交互に向けて話す「インタビューごっこ」などは、自分が今「話す」のか「聞く」のかが視覚的にわかりやすく会話の経験につながるでしょう。
幼児期の会話の特徴一覧
参考資料
『質問―応答関係検査1―検査の作成とノーマルデータ―』(日本音声言語医学会)2023年11月13日閲覧
『質問―応答関係検査2―質的分析と会話能力の段階設定―』(日本音声言語医学会)2023年11月13日閲覧