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欠乏は実行機能を低下させる?
「お金がない」「時間がない」といった「欠乏」は、その人の実行機能を下げる場合があります。
実行機能とは何か目的を成し遂げる際に自分をコントロールする力のことです。
欠乏により心理的に安定していない状態になると、人は冷静な判断が難しくなります。
研究
欠乏と実行機能に関する実験
欠乏は人の実行機能や流動性知能を低下させる可能性があります。
行動経済学の専門家であるセンディム・ムッライナタン氏とエンダー・シャフィール氏らは、被験者らを2つのグループに分けて実行機能に関わる課題を実施しました。
ただしどちらのグループにも実施前に簡単な仮定の話を聞いてもらいます。
1つ目のグループでは、車の修理費用が300ドル(およそ4万円)かかる話。
2つ目のグループには車の修理費用が3000ドル(およそ40万円)かかる話。
どちらかを聞いた被検者は、以下のような課題を行ってもらいます。
画面の左右どちらかに、ハートか花のマークが出てきます。
手元には左右1つずつ計2つのボタンがあります。
ハートが出てきたらハートと同じ側のボタンを、花が出てきたら花と反対方向のボタンを押してもらいます。
抑制機能などを見る、典型的な実行機能の課題と言えます。
この課題を行った場合、1つ目のグループ、つまり少額のお金の話では被験者の成績に特に変わった差はありませんでした。
しかし2つ目、深刻な金額の話を聞いた場合、比較的貧困な家庭の被検者は成績が下がったそうです。
お金に関する「欠乏」が実行機能に影響を与えた興味深い実験と言えます。
レーヴン漸進的マトリックス検査を使った実験
上記のような金策の話をしたあと、レーヴン漸進的マトリックス検査を行った場合でも同様の傾向が見られました。
欠乏は実行機能や流動性知能に影響を及ぼすことが考えられます。
これは特別な話を提示しただけとは限りません。
例えば農家の人を対象にした研究では、経済的に余裕ができやすい作物の収穫後より、収穫前のほうがレーヴン漸進的マトリックス検査の成績が低かったそうです。
解説
実行機能や流動性知能は、意図的なトレーニングで向上させることが一般的には難しいとされる能力です。
しかしこれらはその人の心理的な状況によって変動することもわかっています。
飲酒や睡眠不足はIQをはじめ人の認知機能を下げることがわかっています。
欠乏も同様であり、欠乏は人の認知能力に知らぬ間に影響を与えている場合があります。
補足解説
レーヴン漸進的マトリックス検査とは?
実行機能とは?