欠乏は人の心を占拠する
人は何かが不足している状態だと行動にも無意識に影響を及ぼします。
例えば空腹の状態である人は、食べ物に関する単語を目にしたときに空腹でない人よりも反応してしまいます。
食べ物やお金や時間など、私達は何かの資源がないことで合理的な判断ができないことがあります。
知識として聞くと当たり前のように感じますが、欠乏が自覚のないところで人の判断に影響しているということは一定の示唆があるでしょう。
解説
研究
海外の行動経済学に関する実験によると、人の身体状況が無意識の判断力に影響を及ぼすことがわかっています。
この実験では被験者は画面上に現れた英単語を読んでもらいます。
このとき、被験者が空腹であるとそうでない場合よりも食べ物に関する単語の成績が良かったことがわかっています。
例えば空腹の人にとって「CAKE(ケーキ)」という単語は「TAKE」や「RAKE」よりも素早く認知されたということです。
類似実験
上記の傾向は空腹に限ったことではなく、喉の渇きなど他の欠乏でも見られることがわかっています。
例えば喉が渇いている被験者はそうでない被検者よりも「WATER(水)」という単語を認識するのが速かったそうです。
所見
「お腹が空いていると食べ物のことをつい考えてしまう」ということは当たり前と言えば当たり前の知識かもしれません。
しかしこれを心理学的に研究し立証したことには一定の意義があると言えます。
つまり人は意識して物事を選択していると思い込みがちですが、実は無意識の影響をかなり受けているという示唆があります。
そして人の無意識に影響を及ぼす要因の1つが「欠乏」と言えます。
何かが足りない。不足しているという感覚。
これらを自覚する一方で人は意識の外に追いやることが一旦はできていると考えがちです。
しかし欠乏は無意識を支配し心を支配し人の選択・判断力に影響を及ぼしている可能性があります。