いつも「時間がない」あなたに 欠乏の行動経済学
「いつも「時間がない」あなたに 欠乏の行動経済学」は、時間やお金といった「資源」がないときに人はどのような心理状態になるかを説いた本です。
「欠乏」が人の意思決定にどう影響するのかについて、丁寧に学ぶことができます。
解説・要約
位置付け
「いつも「時間がない」あなたに 欠乏の行動経済学」は、行動経済学者のセンディム・ムッライナタン氏・心理学者のエンダー・シャフィール氏による行動経済学に関する本です。
行動経済学とは、経済学と心理学を合わせた学問です。
人間の合理的でない矛盾した行動を踏まえて経済活動を予測します。
本書はタイトル通り、「欠乏」が人の心理面に与える影響やそれによる意思決定や消費活動の違いを見ていきます。
要約
「いつも「時間がない」あなたに 欠乏の行動経済学」は、人にとって「欠乏」は無意識にその人の処理能力を奪うことに対して注意喚起をしています。
そして欠乏から起こる冷静でない意思決定を回避するため、いくつかのアドバイスをしています。
具体的には大きなゆとりにばかり目を向けるのではなくちょっとした緊急事態に柔軟に対応できる小さなゆとりを持つこと。
心ここにあらずの周りが見えない状態から抜け出せるようなリマインダー(通知)を活用すること。
忙しいときとそうでないときの差や出費が多いときとそうでないときの差を軽減できるよう、資源を平均化できる仕組みを作ることなどです。
そしてなにより、欠乏による処理能力の低下は人のパフォーマンスをその人が思っている以上に変えてしまうことを説いています。
レビュー
「いつも「時間がない」あなたに 欠乏の行動経済学」は、「欠乏がいかに人の処理能力を下げてしまうか」を時間をかけて説く一方で、その具体的な対策は(少なくても個人レベルでは)少し物足りない印象もあります。
調査や実験に基づく理論的な書籍ではあるため知識は深まります。
しかし「では個人がより良く生活するためにはどんな工夫が有効か」という問いに対しては相対的に割かれているページが少ない気がします。
このためすぐに実践できる時間術のようなものも求めている人には本書はあまり向かないかもしれません。
参考資料
センディル・ ムッライナタン、エルダー・ シャフィール『いつも「時間がない」あなたに 欠乏の行動経済学』早川書房、2015年