欠乏は豊かさから始まる
「お金がない」「時間がない」といった「欠乏」は、誰しもが少なからず経験したことがあるでしょう。
このような欠乏は豊かさから始まっていると考えるのは1つの教訓です。
例えば夏休みの宿題をする8月31日に、「時間がない」と感じるのは言わずもがなそれまでに宿題を計画的にしてこなかったからです。
ある種の欠乏は、それまでの資源(お金や時間や自分の集中力・体力)の使い方に改善点がある場合があります。
解説
豊かさと欠乏
仕事や宿題など、ある物事の締め切りに追われている場合、その数週間あるいは数か月前に無駄に時間を過ごしていた人もいるでしょう。
仕事の締め切りを明確にした方が仕事がはかどるのは、よく言われることです。
締め切りは細かに短く設定したほうが人の注意をひき効果的です。
長い期限は欠乏のもとと言えます。
「明日でいいや」と思えるような非常に先の締め切り、「今月はいいや」と思えるような長期の貯金。
「まだ大丈夫」と思えるまとまった時間。
このような長い期限の資源は無駄に使ってしまいがちで、結果として先々の欠乏のもととなります。
ゆとり(スラック)を持つ
人は豊かであると、行動の調整をせず漫然と過ごしてしまいがちです。
夏休みの7月は宿題をせずに遊びがちですし、給与が振り込まれたばかりの月の始めは散財をしてしまいがちです。
豊かさの中で行動を調整せず、先々に「ゆとりを設けること」を軽んじてしまいます。
8月末にバタバタしないよう宿題を済ませておくことは7月に考えにくいですし、月末のあるかもしれない急な出費に対して月の頭にお金を分けておくことはなかなかできないものです。
だからこそ、人は豊かなときほど先々のゆとりを作っておかないといけないという欠乏の教訓とメカニズムを自覚することは重要です。
この自覚がない人は例えば貯金を「普通に過ごして余った金額を月末に貯金しよう」となります。
しかし自覚がある人は「使ってしまうから給料が入ったらまず貯金の分を差し引こう」となります。
欠乏に備えたコツや処世術をできるだけ持っておくことが大切です。
参考資料
センディル・ ムッライナタン、エルダー・ シャフィール『いつも「時間がない」あなたに 欠乏の行動経済学』早川書房、2015年 p284