近転移・遠転移とは?
近転移とは、トレーニングにより類似した課題やその分野の能力が向上することです。
遠転移とは、こういった類似性が低い能力が向上することです。
何かをトレーニングしその効果を検証する上で、近転移・遠転移という考えは重要です。
例えばワーキングメモリのトレーニングは遠転移の効果を出す方法が確立されておらず、その点が課題の1つと言えます。
解説
近転移と遠転移の違い
そのトレーニングが効果的だったかを検証するには、主に3つの視点があります。
- トレーニング課題自体の成績向上
- 近転移の効果
- 遠転移の効果
例えば計算ドリルを解いて、計算ドリルを解くことが上手くなればそれはトレーニング課題自体の成績向上です。
さらに計算ドリルを通して四則演算や算数が上達すればそれは「近転移の効果」と言えるでしょう。
また計算ドリルを通して論理的思考能力や国語の読解能力まで向上するとなれば、その学習は「遠転移の効果」があったと言えます。
このように、何かをトレーニングする場合はそれがどのような範囲にまで効果を及ぼしたかを考えることが重要です。
一般的に、そのトレーニングをやってトレーニング課題自体の成績が向上するのは大前提です。
例えばじゃんけんのように何回やっても勝率が変わらないものをひたすら繰り返しても意味がないことは想像に難くないでしょう。
トレーニング効果を判定する場合、課題自体の成績向上は大前提で、その上で「近転移」と「遠転移」の2つの基準で考えます。
ワーキングメモリのトレーニング効果
ワーキングメモリのトレーニングに関して複数の研究を横断的に分析した日本心理学会の論文によると、
ワーキングメモリのトレーニングは中程度の近転移効果が見らる一方で、遠転移の効果は「わずかにあるかもしれない」程度にとどまっています。
ワーキングメモリにおいて「近転移」とは、ワーキングメモリや短期記憶自体の向上を指します。
遠転移とは流動性知能や実行機能、注意機能や読解・算数・長期記憶などが該当します。
ワーキングメモリのトレーニング
参考資料
『実行機能の初期発達,脳内機構およびその支援』(心理学評論刊行会)2021年11月6日検索
『ワーキングメモリトレーニングと流動性知能』(日本心理学会)2022年8月6日検索
『発達障害のある児童のワーキングメモリは改善できるのか–広汎性発達障害のある児童を対象とした試み』(東北福祉大学機関リポジトリ)2022年8月6日検索
『Training of Working Memory in Children with ADHD』(ResearchGate)2022年8月6日検索
『前頭前野とワーキングメモリ』(日本高次脳機能障害学会)2022年8月6日閲覧
『記憶とその障害』(一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)2022年8月15日閲覧