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子供の嘘と認知発達
嘘というのは相手が持っている情報や自分がいる状況を考えてつかないといけません。
嘘が良いことか悪いことかはおいておいて、嘘をつくにはある程度の思考能力や記憶力、言語能力が必要です。
このように考えると、嘘をつけるようになることも、ある意味では子供の成長であるとも言えます。
一般的には子供は4歳頃から嘘をつけるようになっていきます。
以下、子供の嘘を認知的発達の側面から考えていきます。
解説
誘惑のパラダイム
「誘惑のパラダイム」とは子供の虚言行動について研究をしているヴィクトリア・タルウォー氏が行った実験です。
別名、「のぞき見ゲーム」とも呼ばれています。
「のぞき見ゲーム」の内容は以下の通りです。
・子供に後ろ向きになってもらう。
・検査者がいろいろな音を鳴らす。
・子供に振り返ってもらい、今の音はどれか当ててもらう。
・子供は数回正解すると賞品がもらえる。
・問題はだんだん難しくなる。
・難しい問題の音を鳴らした後、検査者は「用事がある」と言って部屋から出る。「後ろを見ないでね」と念を押す。
・実は部屋には隠しカメラがあって、子供がのぞき見したかどうかがわかる。
・検査者が部屋に戻り、実験を続行する。
・「本当は私がいない間に後ろを見た?」と聞いて子供が言い訳をしたりする様子を観察する。
誘惑のパラダイムの実験意図
「のぞき見ゲーム」の内容は先述した通りです。
子供は魅力的な賞品を提示され「クイズに正解したい」という気持ちになります。
しかしクイズはどんどん難しくなる一方です。
このままでは賞品がもらえないかもしれないと不安になることでしょう。
そんなときにチャンスがきます。それは検査者の退出です。
こっそりのぞき見をすれば答えがわかる、賞品がもらえるという誘惑にかられます。
しかし、一度のぞき見をすれば、子供はそれをばれないようにしないといけません。
戻ってきた検査者の「本当は見たんでしょ?」といった「かまをかける」問いかけにうまく答えなければいけなくなります。
ひとつ嘘をつくと、それがばれないようにまた別の嘘をつかないといけなくなるものです。
ある意味、ばれない嘘をつくとは全ての嘘を矛盾なく組み立てられる言語能力や思考能力が必要になります。
誘惑のパラダイムは嘘を通して子供の言語能力や思考能力の発達をみる実験です。
誘惑のパラダイムの結果
誘惑のパラダイムを実施すると、
3歳児の場合は約3分の1の子供がのぞき見をするそうです。
そして検査者が「本当はのぞき見したでしょ?」とかまをかけるとほぼ全員が「見ちゃった」と白状します。
4歳児の場合は80%以上の子がのぞき見をします。
さらにその80%以上が検査者が聞いても「見ていない」と最後まで言い張りました。
子供は年少さんになる頃には大多数が嘘をつき、それをつき通そうとできることが予想できます。
さらにもしその子に兄や姉がいる場合は、嘘をつきだす時期は早いとも言われています。
褒め言葉を素直に受け取るのは6歳まで?
子供は成長とともに嘘という能力を身につけ、試し始めます。
そして6歳頃には嘘がばれないように相手のリアクションを見ながらあれやこれやと取り繕うための別の嘘を組み立てます。
額面通りの言葉以外の思考力を持ち始めるのです。この能力は嘘だけに影響するわけではありません。
例えば褒め言葉に対する相手の意図の読み取りも、6歳頃から変化があります。
褒め言葉を額面通り受けとれるのは、7歳未満と一説では考えられています。
それ以降は言葉の裏の意味を考えだします。
12歳にもなれば、先生の褒め言葉は単純な称賛ではなく、「勉強ができていない自分を褒めて伸ばそうとしている」と考えます。
子供はだんだんと大人になっていきます。
年長さんになる頃には、大人のことをいろいろと見透かしているのかもしれません。
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