前のステップ
「く」の比較・照合
前回までのステップで「く」の正誤弁別を行いました。
このステップでは「く」の耳の訓練の最終段階である比較・照合を行います。
これにて「か」「こ」「く」3つの音の耳の訓練が終了します。
解説
意義・意図
自分で自分の発音を修正できるのが比較・照合の段階です。
正しい発音を長期的に定着させるには、この比較・照合の能力が必要不可欠です。
親が「音が出せるようになったから」と早々に構音訓練に通うことをやめ、音が前の状態に戻ってしまう子が時折います。
構音訓練のゴールは正しい音を出せるだけでなく、練習が終了してもその音を維持できることです。
そのためには、子供自身が正しい音に対して「気づき」を持ち、もし音がひずんでも「修正」できる力が必要です。
構音訓練は正しい音を出すために「口の訓練」に意識がいきがちですが、長期的には「耳の訓練」も非常に重要です。
練習方法
「く」を含む短文や文章の音読、あるいは自由会話を行います。
そして構音できていなかったら自分自身で修正してもらいます。
自分で気づいて自分で修正できた場合は、指導者がしっかり褒めてあげて習慣形成を行っています。
一方で誤った音に気づかなかった場合は、「え、(くまを)うま?」のように聞き返して気づきを促します。
この指摘については当然ながら多すぎれば子供は嫌になってしまうでしょう。
子供がある程度は構音可能で、しかし文章や会話で時折間違うくらいの頻度でなければ比較・照合の訓練は成立しません。
比較・照合の耳の訓練ステップは、文章音読や会話にておおむね構音ができるようになっている状態で取り入れます。
ちなみに、子供が自己修正できた際に上手に褒めることは、指導者や親の腕が問われます。
多様な褒め言葉を持てることが育児・教育において重要です。
「上手にできたね」の一辺倒では誰もが白々しく感じてしまうでしょう。
「上手にできたね」「よく気づけたね」「前よりもできるようになったね」
同じ「褒める」でも「表現」のレパートリーがあることで、よりモチベーションを促せるでしょう。
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参考資料
湧井豊『構音障害の指導技法-音の出し方とそのプログラム-』学苑社、1992年