メンタライジングと共感と心の理論
メンタライジング(メンタライゼーション)とは他者の気持ちを推察する力のことです。
共感とは文字通り他者の気持ちに自分の感情を同調させる力のことです。
メンタライジングと共感はどちらも他者の心を読み取ることに関する力ですが厳密には異なる能力と考えられます。
人の心が推察できることと、それに関心を持てることは異なるからです。
共感の力は性格因子における調和性と関連があり、さらに心の理論との関連性も興味深いものとなっています。
解説
ビッグファイブとは?
ビッグファイブとは、人の性格を5つの要素で考える理論のことです。
5つの因子とは神経質傾向・外向性・開放性・誠実性・調和性を指します。
このうち調和性は心の理論と関連があると考えられており、心の理論の課題と調和性のスコアは相関している研究結果もあります。
メンタライジングと共感の違い
物語を聞いて回答する必要がある心の理論の課題成績においては、調和性のスコアと相関が見られました。
一方で「目から心的状態を読み取る(reading the mind in the eyes)」テストでは心の理論の力と調和性のスコアの相関が見られませんでした。
このことから、以下のようなことが言えます。
人の気持ちを理解するにはメンタライジングや共感の力が必要です。
そして共感の力は性格因子における調和性のスコアと関連があります。
心の理論課題においてメンタライジングと共感の双方の力が試されるストーリー性のある課題では調和性のスコアと相関を示しますが、逆にメンタライジングのみの力を問うような課題だと調和性との相関は見られなくなります。
ビッグ・ファイブ理論とは?
参考資料
ダニエル・ネトル(Daniel Nettle)(著)、竹内 和世(翻訳)『パーソナリティを科学する―特性5因子であなたがわかる』白揚社、2009年