無理やり食べさせて偏食は改善するのか?
嫌いな食べ物を子供に無理やり食べさせても、それを将来好きになる可能性は低いと考えられます。
むしろ「無理やり食べさせられた」というネガティブなイメージがマイナスに働く可能性もあります。
嫌いな食べ物や自分から食べない食べ物について食べる機会を与えることは大切ですが、その強制力が強すぎると有意義とは言えません。
解説
無理やり苦手な物を食べさせること
アメリカ国立衛生研究所の論文によると、子供の頃に無理やり食べさせられた食べ物について、7割以上の人は大人になっても嫌いなままだったそうです。
無理やり食べさせられた記憶は人間関係自体にもネガティブな印象を与え、長期的な食べ物の拒絶を生む可能性があります。
嫌いな食べ物を食べないとどうなるか
一方で行動心理学において、偏食(好き嫌い)の原因の1つに逃避の負の強化が考えられています。
つまり、嫌いな食べ物を避けて食べないで済むことにより、余計にその食べ物を嫌いだと思い避けることが習慣化していくという考え方です。
もちろん偏食の全ての理由がそうとは限りませんが、そういった負のループに陥っている子も中にはいるでしょう。
また日本民族衛生学会の論文によると、子供が好きな物しか食卓に出さないことも、少なからず偏食のリスクであることが述べられています。
子供の偏食への対応
以上より、嫌いな食べ物を無理やり食べさせることは建設的ではありません。
一方で、嫌いな食べ物を食卓にすら出さず、好きな食べ物しか食べない生活もリスクがあります。
栄養面を考え、好きな食べ物も嫌いな食べ物も使ったメニューが好ましいでしょう。
無理やり食べさせる必要はありませんが、嫌いな食べ物を少量でも食べる機会を作るという微妙な塩梅が食育には大切です。
参考資料
『偏食の観点からみた幼稚園児の食習慣に関するパス解析』(一般社団法人 日本家政学会)2021年9月11日検索
『幼児の偏食と生活環境との関連』(日本民族衛生学会)2021年9月11日検索
『母親の就業状況別にみた幼児の偏食とその関連要因』(日本民族衛生学会)2021年9月11日検索
『幼児期前期における嫌いな食べ物の質的変化に関する縦断研究』(特定非営利活動法人 日本栄養改善学会)2021年9月11日検索
『幼児期における嫌いな食品の変化と偏食との関連』(西九州大学)2021年9月11日検索
『食の問題行動に関する臨床発達心理研究(1)偏食の経験的定義』(広島修道大学)2021年9月11日検索
『食の問題行動に関する臨床発達心理研究(2)偏食尺度の標準化と偏食の諸特徴』(広島修道大学)2021年9月11日検索
『自閉スペクトラム症児の偏食に対する食物同時提示法の適用』(NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会)2021年9月11日検索
『自閉症スペクトラム障害児の食事に関する問題の検討』(一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会)2021年9月11日検索
『自閉症児の食嗜好の実態と偏食への対応に関する調査研究』(公益財団法人 浦上食品 ・ 食文化振興財団)2021年9月11日検索
『”You will eat all of that!”: a retrospective analysis of forced consumption episodes』(アメリカ国立衛生研究所)2021年9月20日検索
『Increasing fruit and vegetable consumption among preschoolers: evaluation of color me healthy』(アメリカ国立衛生研究所)2021年9月20日検索
『Repeated exposure in a natural setting: a preschool intervention to increase vegetable consumption』(アメリカ国立衛生研究所)2021年9月20日検索