心理学

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「時間があるときに」では永遠に時間がないまま|時間術と心理学

公開日:2023年2月9日


 
 

「時間があるときに」では永遠に時間がないまま

 欠乏を経験する人は、今だけでなくたいてい後になっても経験する可能性があります。

 「時間ができてから」
 「お金に余裕ができてから」
 「上手になってから」

 そのように今の忙しさや不足を理由に、行動を先延ばしにしていては、その「したいこと」は一生できないかもしれません。

 将来を推し量るには認知資源が必要で、現在の誘惑に抵抗するには実行制御能力が必要です。

 
 
 

解説

認知資源

 欠乏は人の認知能力の影響を与えます。

 時間がないと焦ってしまい物事を冷静に判断できなくなります。
 そういった経験は誰にも少なからずあるのではないでしょうか。

 時間がない、お金がない、スキルが足りない。

 何らかが欠乏した状態だと、人は視野が狭くなり冷静な判断ができなくなります。

 そのように認知資源が不足すると、将来を推し量る力にも影響が出ます。

 時間がないと今しないといけないことばかりに意識が向いて、先のことを冷静に考えることができません。

 「時間ができたら」と将来はまるで今より時間があるように感じます。
 しかしながら、今忙しそうにしている人の多くは明日も明後日も1か月後も忙しいのではないでしょうか。

 認知資源が不足し、「明日なら今日より時間がある」と思ってしまいます。
 しかし多くの場合、時間がないのは日々のスケジュール、ゆとりの作り方に問題があるのかもしれません。

 そういった広い視野での見直しも、認知資源が限られると難しくなります。

 
 

実行制御能力

 現在の誘惑に抵抗するには実行制御能力が必要です。

 明日ダイエットしようと決意しても、そのときになって美味しそうな食べ物を目にするとつい食べてしまう。
 今この瞬間の誘惑を、事前に正確に予測することはなかなか難しいものです。

 明日はできると思っていても、そのときになると誘惑に負けてしまう。

 実行制御機能の強さは人によって異なりますが、少なくとも自分自身が安定した状態であるほうが発揮できるでしょう。

 つまり時間に追われていたり、お金に追われていたり、睡眠不足や空腹など身体的な欠乏があったりしては、十分に力を発揮できないかもしれません。

 自分のコンディションを整えることは、自分の中にある自制心を発揮するために必要なことでしょう。

 
 
 

参考資料

センディル・ ムッライナタン、エルダー・ シャフィール『いつも「時間がない」あなたに 欠乏の行動経済学』早川書房、2015年 p148

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