PVT-R(絵画語い発達検査)はお子さんの語彙力をみる言語検査です。
補足ページ:PVT-R(絵画語い発達検査)とは?
今日はPVT-Rを実施した際の結果の見方を考えます。
まず前提として、
PVT-Rは4つの絵の中から1つを指さして解答してもらう検査です。
口頭で答える問題はありません。
また、出題は文章ではなく検査者が言った単語に適当なものはどれかを答えてもらいます。
言葉がどれだけ知っているか。これは理解語彙力です。
言葉をどれかで話せるか。これは表出語彙力です。
PVT-Rは「理解語彙」に関する検査であると言えます。
年齢に比べて、語彙が少ないなあという印象のお子さんがいたとします。
この場合、2つの可能性があります。
1つは、もともと言葉を知らない。
もう1つは、知ってるけど話せない。
PVT-Rの結果が低く出れば前者、年相応以上なら後者の可能性であることが予想できます。
PVT-Rに限らず、選択形式の検査でやっかいなのが、「てきとうに指さしてたまたま正解する」というパターンです。
この「まぐれ当たり」が正確な結果の邪魔をしないように、検査やテストは作成過程において様々な工夫がなされます。
PVT-Rの場合、「解答して間違った場合(=誤答)」と「自発的に『わからない』と答えた場合(=無答)」で結果に差をつけます。
前者より、後者のほうが良い結果になるように採点されます。
PVT-Rは誤答と無答の割合がきちんと結果に反映されます。
しかし結果の数値だけでなく、検査場面からわかることもあります。
例えば、PVT-Rは1問あたり4択です。
しかし答えが均等に4択に散りばめられているかというとそうではありません。
同じ位置に正解が偏ったりもします。
お子さんが選択肢を均等に指さそうとしていたら、それは答えがわかっているわけではなく先入観で解答していることが予想できます。
また、検査前半はわからないときは「わかりません」と答えていたのに、後半になるに従って明らかに図版を適当に指し始めるケースがあります。
これは集中直が持続していなかったり、問題が難しくてちんぷんかんぷんになっていることがわかります。
このようにPVT-Rはただ図版を指してもらうだけの検査ですが、検査時の様子からお子さんの性格や学習の特徴が読みとれます。
PVT-Rを実施すると、そのお子さんの語彙年齢と評価点がわかります。
語彙年齢は文字通り、そのお子さん語彙力が何歳相当かということです。
評価点は偏差値のようなものです。
例えば実年齢5歳のお子さんが、語彙年齢4歳8カ月と出たとします。
このお子さんは実年齢より語彙が少ないことはわかります。
けれど、どのくらい深刻な事態なのでしょう?
「ちょっと語彙が少ないけど、許容の範囲内」なのか
「今すぐことばの学習を行った方がいい」のか。
語彙年齢だけでは、語彙力が高い・低いはわかっても、その程度や深刻さがわかりません。
お子さんの語彙力をより正確に把握するには、評価点が必要になってくるわけです。
PVT-Rの評価点は平均10、標準偏差3の正規分布を成します。
平均と標準偏差の関係はここでは割愛しますが、詳しくは以下のページをどうぞ。
補足ページ:知能指数(IQ)の理解において重要な「平均」と「標準偏差」とは?
PVT-Rの場合は、評価点の平均は10です。
標準偏差が3です。3の倍数で見ていきます。
評価点が10±3、つまり7~13であれば平均の範囲内と考えて問題ありません。
続いて、3×2は6ですね。
評価点が10±6、特に10-6である4前後から語彙力の低さが深刻に捉えられてきます。
PVT-Rの評価点が4とか5だったら、ちょっと低すぎるなあという印象になっていきます。
一般的に語彙力というと、どれだけ物の名前を知っているか。つまり名詞の数に意識がいきがちです。
しかし実際は、語彙力というのは名詞の数だけで決まるわけではありません。
「りんご」は「赤い」し「丸い」のです。
また、その物の側面をどれだけ知っているかもポイントです。
「りんご」は「くだもの」でもあり、「甘い」でもあるのです。
このように、語彙というのは必ずしも物と1対1対応ではありません。
物や言葉の様々な側面を理解することが、語彙力につながります。
その他の記事
自閉症スクリーニング質問紙 (ASQ)とは?