貯金が6%増える工夫
行動経済学者のセンディム・ムッライナタン氏らの研究によると、
貧しい人達を対象に、毎月月末に貯金を促すリマインダー(メール)を送ると、貯金が6%増えたそうです。
6%という数字はそこまで大きい数字ではないかもしれませんが、貯金をするためには必ずしも収入を増やせばいいわけではなく、ちょっとした工夫も大切であると言えます。
解説
貯金を促すリマインダー
ムッライナタン氏らは、貧困家庭を対象に各人が何のためにいくら貯金をしたいか事前に聴取しました。
そして毎月月末、それらを踏まえたリマインダー(つまり通知)をメールあるいは手紙で送りました。
通知の内容は強制するものではなく、あくまで事前に聞いたその人が「何のためにいくら貯金をしたいか」を思い出させるような促しにとどまりますが、それでも効果はありました。
強制をしないこの通知だけで、人々の貯金は6%増加したようです。
ムッライナタン氏らは、貧しい人達が貯金をしない理由はトンネリングにあると考えています。
トンネリングとは、ある目的に意識が向くあまり、他の目的がおろそかになってしまう状態のことです。
車の運転でトンネルに入ると、内側の物は見えますが外側の物は見えません。
トンネリングはこういった視野狭窄を心理面に当てはめた言葉としてムッライナタン氏らは用いています。
貧しい人々はお金のやりくりが忙しなく、貯金のような「緊急でない重要事項」を後回しにしてしまいがちです。
貯金ができない理由はそもそも収入が少ないということも関係はしているでしょうが、それだけでなく貯金を後回しにしてしまう視野狭窄も背景にあると言えるでしょう。
日常生活と貯金
貯金は毎月余った額でするのではなく、給料が入った時点で先に取り分けるのがコツとしてよく言われます。
実際、給与が振り込まれる口座から自動で貯金額を引き落とすように設定している人も少なくないでしょう。
重要だけれど緊急でない費用というものは、意識して取り分けないとなかなか貯まりません。
この対策として、リマインダーは役立ちます。
アプリでの通知やアラーム、メモを机やパソコンに貼っておくなどやり方は様々です。
貯金に限らず様々な「重要だけれど緊急でない事項」に取り組むには、自分が忘れた頃に通知をしてくれるリマインダーは有効でしょう。
参考資料
センディル・ ムッライナタン、エルダー・ シャフィール『いつも「時間がない」あなたに 欠乏の行動経済学』早川書房、2015年 p263