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s(無声歯茎摩擦音)の固定
前回のステップで「θ(無声歯摩擦音)」から「s(無声歯茎摩擦音)」への誘導を行いました。
このステップでは「s(無声歯茎摩擦音)」を安定・固定させていきます。
つまりストローを使わず「s」を安定して出せるようにしていきます。
「s」の固定は、サ行の構音訓練において最も基礎となる重要なステップです。
解説
意義
サ行の構音訓練においてポイントとなるのは、舌端で隙間を作って摩擦音を出すことです。
しかし初めから「s」の音を出すことは、子供にとってややイメージがしにくく難易度が高いものとなりがちです。
サ行の構音訓練においてよく用いられる手法は、まず初めにわかりやすい「θ(無声歯摩擦音)」を練習し、そこから「s(無声歯茎摩擦音)」へ誘導していく手法です。
しかしながら、この方法は「θ(無声歯摩擦音)」というある意味で異常構音を覚えさせることでもあります。
「θ(無声歯摩擦音)」から「s(無声歯茎摩擦音)」へ誘導し、その「s」をしっかり固定させることは、子供が「θ」を中途半端に覚えたままにしない観点からも重要です。
方法・手順
ストローを併用しながら「s」を出す
「θ(無声歯摩擦音)」の状態から舌を静かに口の中に引っ込め、口の形を変えないようにしながら「s(無声歯茎摩擦音)」を出します。
難しい場合は、舌を引っ込めた状態でストローを前歯で柔らかく噛み、その状態でストローから呼気を出し「s」を試みます。
ストローを使わず「s」を出す
ストローを使って「s」の産出頻度が上がってきたら、徐々にストローをなくしてきます。
「まずは5回」「次は10回」など小さく目標を決めながら、少しずつ安定化させていきます。
指導者も見本を見せながら、一緒にやっていきましょう。
気をつけること
練習の中で無声後部歯茎摩擦音(しゃしゅしょに近い音)や「F」に近い音が出る場合があるかもしれません。
この場合は再度ストローを使って「s」を安定化させます。異なった音が癖にならないように注意しましょう。
また、子供が構音を意識し過ぎるあまり力が入り、唇を曲げたり下顎を動かすような場合は休憩をはさんだり一旦練習を中止しましょう。
このような傾向は側音化構音になりやすいので注意が必要です。
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参考資料
湧井豊『構音障害の指導技法-音の出し方とそのプログラム-』学苑社、1992年