再分配よりも事前分配
教育や子育てを支援する富の「事前分配」は、社会にとって有意義な政策の1つと考えられています。
事前分配は所得の再分配よりも持続性のある効果が期待できます。
解説
再分配・事前分配とは?
再分配とは、所得などの富を国が集め国民に配る行為です。
高額所得者が税金を(平均的な所得の人と比べると)多くとられ、貧困家庭の援助の財源に使われるのは典型的な富の再分配と言えます。
これに対し、恵まれいない子供の幼少期の生活環境を改善する目的で富を配ることを事前分配と言います。
所得の再分配が「すでに」貧困であったり社会生活が困難な人々を支援する分配であるのに対し、事前分配は将来社会的に不利な立場になってしまうかもしれない子供を事前に支援し、そういった事態を回避する意図があります。
事前分配の意義
貧困な家庭に育った子供が大人になって同じように貧困な家庭を築き、その子供はまた貧困な生活を強いられる。
このような負のループがありそこから抜け出せないことは社会の状態として望ましい状態とは言えないでしょう。
子供は環境を選んで生まれることはできません。
恵まれない環境に生まれても、社会が支援し誰もが同じスタートラインに立てればそれに越したことはありません。
つまり貧困な家庭に生まれてもそこから抜け出す術がある、「社会的流動性」が社会には必要です。
そのためには、社会的に弱い立場の人を切り捨てるのではなく支えていける「社会的包容力」も必要です。
富の再分配は社会的流動性や社会体的包容力を一時的には改善しますが、それが持続しにくい難点があります。
このため、子供の教育に力を入れるなどの「事前分配」が重要視されます。
事前分配の基準
事前分配を行うにあたりどのような家庭を支援するか。
これは重要であり難しい問題です。
世帯所得や両親の学歴といったステレオタイプの物差しは、子育ての質に相関関係がありますが因果関係があるわけではありません。
世帯収入や親の学歴が低い家庭ほど、子育ての質が良くない傾向がありますが、世帯収入や親の学歴が低いと子育ての質が低くなるわけではないのです。
このような相関関係と因果関係を見極めながら、事前分配する必要があると言えます。
参考資料
ジェームズ・J・ヘックマン(著)、古草 秀子(翻訳)『幼児教育の経済学』東洋経済新報社、2015年