質の公準とは?
言語学者のポール・グライスは、会話のルールとして「協調の原理」という考え方を挙げています。
「協調の原理」は「質の公準」「量の公準」「関連性の公準」「様式の公準」の4つの下位原則があります。
「質の公準」とは、スムーズな会話のためには「真実を話す」「嘘は言わない」「わからないことはわからないと言う」などが大切であるとする原則です。
文字通り会話における「質」の原則を説いていると言えます。
ちなみに「質の公準」は「質の格率」「質の公理」など名称が微妙に異なる場合もあります。
解説
「質の公準」の大切さ
会話において情報の精度は大切です。
嘘をつくことが当たり前の会話では、なんでもありになってしまいコミュニケーションが取れません。
信頼のある会話は情報の正確性や信憑性の上に成り立つと言えるでしょう。
「質の公準」は、会話で知らないこと・わからないことに対して素直に「知らない」「わからない」と言えることの大切さも示唆しています。
会話において必ずしも正しい情報を知っていないといけないわけではありません。
要は知らないことは(知ったかぶりをせずに)素直に「わからない」と言えればコミュニケーション自体は成立します。
「質の公準」と子供の言葉の発達
言葉の発達において、2歳頃になると子供は自分の知らないことを「わからない」と返答できるようになります。
また不確かな情報に対して「~かもしれない」といった断定しない言い方は3歳頃から見られ始めます。
つまり2~3歳以前は自分の発する言葉に対する真偽の判断が曖昧で、成長の中で自分の発話をより客観的に見る力が段階的についていきます。
言葉の発達において「質の公準」は3歳以降から獲得されていくと考えることができるでしょう。
「協調の原理」の解説
参考資料
『質問―応答関係検査1―検査の作成とノーマルデータ―』(日本音声言語医学会)2023年11月13日閲覧
『質問―応答関係検査2―質的分析と会話能力の段階設定―』(日本音声言語医学会)2023年11月13日閲覧