相互排他性(そうごはいたせい)とは?
「相互排他性」とは、1つの対象には同じカテゴリーの名称しかつかないという原理です。
例えばチワワは「犬」でもあり「チワワ」でもありますが、これが成立するのは「犬」と「チワワ」が同じカテゴリーだからです。
チワワを「犬」と呼びつつ「猫」と呼ぶことはできないでしょう。
相互排他性は、子供が言葉を覚えていく際に必要な、生得的に有する認知的制約の1つと考えられています。
解説
相互排他性の意味
相互的排他性は、人が言葉を学ぶ上での概念形成や分類の理解に役立っています。
「相互的」とは互いに関係があるということです。
「排他的」とは他方を受け入れない関係を意味します。
つまり「相互的」で「排他的」というのは言葉の意味として、「互いに相容れない関係性」であると言えるでしょう。
言葉の発達における「相互的排他性」は、まさに言葉同士の「互いに相容れない関係性」を生得的に理解することに役立ちます。
「犬」と「猫」はある意味で「互いに相容れない関係性」の言葉と言えます。
なぜなら犬は猫ではありませんし、猫は犬ではありません。
犬に含まれる猫もいませんし、猫に含まれる犬もいません。
このように、私達は相互的排他性の概念により(それが同じカテゴリーに属する言葉でなければ)互いに相容れない関係性であることがわかります。
相互的排他性は、人の生得的な認知的制約の1つです。
相互排他性の例
例えば私達が「ケーキ」という言葉を学んだとします。
目の前にある食べ物が「ケーキ」という名称であるということを学んだとき、私達は同時にそれが「『コーヒー』ではない」こともわかります。
一般的に、「ケーキ」と「コーヒー」は違うカテゴリーです。(コーヒー味のケーキといった細かい話は一旦置いておきます)
「ケーキ」と「レアチーズケーキ」は同じカテゴリーの関係性ですが、コーヒーは違います。「コーヒー」は「カフェラテ」などと同じカテゴリーと言えるでしょう。
だからこそ、私達は「これは『ケーキ』であるが、『コーヒー』でもあるかもしれない」とは一般的には思いません。
なぜなら「ケーキ」と「コーヒー」は異なるカテゴリーだからです。
一方で、私達は例えばレストランに行って店員から「今日のデザートはシェフのおすすめケーキです」と言われれば、「イチゴのショートケーキ」や「レアチーズケーキ」など様々なケーキを想像します。これらは同じカテゴリーだからです。しかし「コーヒー」は想像しないでしょう。
このように、相互的排他性は言葉の理解や推測を手助けしてくれています。
言語発達における認知的制約の種類
参考資料
『日本の子どもの初期の語彙発達』(日本言語学会)2023年9月30日閲覧