感情コントロールのSST
ソーシャルスキルトレーニングにおける標的スキルの例として、「感情のコントロール」があります。
「感情をコントロールする」ということは大人でも難しいことですが、生きていく上で大切なスキルと言えます。
人の感情は様々ですが、このページでは特に「怒り(イライラ)」の感情について見ていきます。
解説
SSTの実践研究
日本認知・行動療法学会の論文に、自閉症スペクトラム障害児へソーシャルスキルトレーニングを行った研究があります。
この研究では小学生の自閉症スペクトラム障害児に複数のソーシャルスキルについてトレーニングを行っています。
このソーシャルスキルトレーニングの1つが、「感情のコントロール」のセッションです。
学校生活で「怒り」のコントロールが難しいと、暴言や暴力、他児とのトラブルにつながりやすいでしょう。
このため集団生活のおいて「怒り」をコントロールできることは重要です。
これを踏まえ、ソーシャルスキルトレーニングの例を考えていきます。
SSTの内容
- 良くない怒りの発露の仕方(物語)を提示する。(クラスメイトを叩くなど)(対象児の理解が難しい場合は、例題を抽象的なものから具体的なものに変えていく)
- 良くない怒りの発露が行われた場合、相手はどんな気持ちになるかを一緒に考える。(回答が難しい場合は適宜2択などで気持ちを確認していく)
- 怒りをコントロールするにはどのような方法が良いのか・気をつけることは何かを一緒に考える。
上記のように一緒に考えていきます。
適宜ワークシートなどを用いて書き込んでいくとわかりやすいでしょう。
これらを踏まえ「言語的教示」「モデリング」「行動リハーサル」「フィードバック」「般化」の手順でトレーニングしていきます。
保護者が同室であれば、指導者と保護者にてモデルと提示すると有意義でしょう。
怒りの対処法としては例えば以下のようなものが考えられます。
- 深呼吸をする。
- (時間をおくために)心の中で数を数える。
- 自分の気持ちや理由を伝える。
- 相手にも理由があると考える。
- その場を離れる。
また、感情のコントロールが苦手で暴力などがある子の場合は、「文句を言う」などひとまず暴力以外の対処法に切り替えることも段階としては考えられるでしょう。
参考資料
半田健(2019)『日本における自閉スペクトラム症児を対象としたソーシャルスキルトレーニングに関する研究動向』(一般社団法人 日本LD学会)2025年8月26日閲覧
岡島純子、谷晋二、鈴木伸一(2014)『通常学級に在籍する自閉性スペクトラム障害児に対する社会的スキル訓練 : 般化効果・維持効果に焦点を当てて』(一般社団法人 日本認知・行動療法学会)2025年8月26日閲覧
『ソーシャルスキルトレーニング絵カード』(エスコアール)2025年7月26日閲覧