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吃音の「語の言い換え」と「回避」
吃音においてどもらないようにするために言葉を変えたり、そもそも会話を避けるのは好ましいことなのでしょうか?
価値観は人それぞれですが
吃音において「語の言い換え」や「回避」はストレスをより根深いものにするだけでなく、他者との人間関係に誤解が生じる可能性があります。
解説
語の言い換え
吃音の特徴として症状の一貫性があります。
つまり特定の場面や言葉でどもるという傾向です。
これにより、どもる言葉をどもらない言葉に言い換え、吃音を回避しようとする状況があります。これが吃音における「語の言い換え」です。
例えば「おばあちゃん」という単語でどもるので「祖母」という単語を使うなどです。
「誤の言い換え」は吃音の進行を4段階で表す「吃音の進展段階」において、第3層の症状と位置付けられています。
つまり「語の言い換え」は比較的吃音が進行した症状と言えます。
回避
吃音において「回避」は、そもそも会話をするような場面を避ける状況を指します。
「回避」は吃音の進展段階における第4層、最も吃音が進行している状態に見られる症状の1つと考えられています。
語の言い換えと回避の位置づけ
「誤の言い換え」や「回避」は一見すると吃音の症状をうまく隠し対応できているように感じます。
しかしながら、吃音の支援において「誤の言い換え」や「回避」があることはあまり好ましい状況とは考えないことが多いです。
理由としては、吃音に対するネガティブな印象と、それに伴うストレスを本人が抱えたままになっている可能性があるからです。
吃音が現代医学では治療法が確立されておらず、特定の手技で吃音を根本から0にすることは困難です。
このため、吃音と上手に付き合っていく受容と心の健康が吃音支援には大切とされています。
つまり「自分の吃音を理解してくれる周囲の環境」や「どもっても大丈夫と思える自己肯定感」が大切です。
一方で、「語の言い換え」や「回避」は「吃音がないこと」を最優先しており、「完治しない吃音を治そうとする」悪循環に陥ってしまいがちです。
語の言い換えと回避が及ぼす人間関係
また、「誤の言い換え」や「回避」は人とのコミュニケーションで不自然な状況を生んでしまいがちです。
咄嗟の会話で完全にニュアンスが一緒で別の言葉を言うのはかなり難しいものです。
このため語の言い換えは基本的に会話において不自然な印象を相手に与えます。
また、一定以上常識のある大人同士であれば、吃音に対して「誠実」な印象を持っても「嫌悪」を持つ人は少ないです。
ただこれがわざと相手との会話を避ける「回避」だと、不誠実な印象を与えかねません。
このように、「語の言い換え」や「回避」は「どもりながら話す」場合よりもむしろ人間関係にひびを入れる可能性があります。
補足記事
参考資料
『吃音症の遺伝学』(日本小児耳鼻咽喉科学会)2021年11月20日検索