他者配慮選好とは?
他者配慮選好とは、人は自分の利益を他者の利益を総合して意思決定を行う傾向のことです。
これは実生活から考えれば身に覚えのある当たり前のことのように思えますが、人の心理過程として考えると興味深い性質と言えます。
解説
他者配慮選好の実験
ガラスの壁で隔たれた2つの部屋があり、一方にあなた、他方にあなたが知っている友好な人物がいます。
2人ともお腹が減っていて、あなたの前には2つのレバーがあります。
レバーAを引くと、あなたの前にだけ食べ物が運ばれます。
レバーBを引くと、あなたと相手の両方に食べ物が運ばれます。
あなたはどちらのレバーを引くでしょうか?
ほとんどの人はレバーB、つまりあなたと相手の両方に食べ物が運ばれる方を選ぶでしょう。
相手はあなたが知っている人で、しかも仲が悪いわけでもないのですから。
自分の利益が変わらず他者にも利益が出るのなら、そちらを選択する。
このように人は「他者にとってどうか」も踏まえて意思決定を行います。
しかし、例えばチンパンジーで同じ実験をした場合は違った結果が出ます。
チンパンジーはレバーのAとBをランダムに引きます。
なぜならどちらも自分に出てくる食事は同じなので、レバーを使い分ける必要はないからです。
このように、「他者配慮選好」は人間の心理について興味深い視点と言えるでしょう。
他者配慮選好と心の理論
他者配慮選好は心の理論と密接に関係していると考えられます。
心の理論とは、相手の立場になって考えることができる能力のことです。
自分本位の考えではなく、相手がどんな情報を持っているか、そこから相手がどのように判断できるか、これらを相手の立場になって考えることができる能力です。
他者配慮選好の背景には、他者の気持ちを推察できる力が深く関わっています。
参考資料
ダニエル・ネトル(Daniel Nettle)(著)、竹内 和世(翻訳)『パーソナリティを科学する―特性5因子であなたがわかる』白揚社、2009年