心の理論に関連する実行機能の下位項目
心の理論に実行機能が関連するという見方は多いものの、その詳細は研究途中であり不明な点も多々あります。
研究によると、2歳時点で優勢反応制御能力が高い子供は3歳3か月時点で心の理論課題の成績が高かったという事例があります。
また6~11歳児においては「認知セットの柔軟な切り替え」と「ワーキングメモリに保持された情報の更新」の力が1年後の心の理論の力を予測すると考える研究もあります。
解説
心の理論と実行機能
心の理論と実行機能にはなんらかの関係があるとする見方が多いです。
心の理論とは、相手の立場になって考えることができる能力のことであり、もう少し専門的に言うと誤信念の理解を意味します。
実行機能とは、その人がその目標を達成するための、思考や行動を制御する認知システムを指します。
実行機能の下位項目
実行機能には以下のような3つの下位項目があると考えられています。
- 優勢反応の抑制
- 認知セットの柔軟な切り替え
- ワーキングメモリに保持された情報の更新
心の理論と実行機能は関連するであろう説が比較的有力なのですが、では下位項目のうちどれが特に影響するのかがまだいまひとつわかっていません。
年齢との関係
このため心の理論に関わる実行機能の下位項目は年齢によって微妙に変化するのではないかという説があります。
これが冒頭に述べた内容であり、幼児期においては「優勢反応の抑制」が、学童期においては「認知セットの柔軟な切り替え」と「ワーキングメモリに保持された情報の更新」が関連するのではという考えです。
この説をさらに考察すると、幼児期に見られるような比較的簡単なコミュニケーション・誤信念の理解においては「優勢反応の抑制」機能が重要であるという仮説が考えられます。
同様に、学童期以降のようなより複雑な人間関係・誤信念の理解には「認知セットの柔軟な切り替え」と「ワーキングメモリに保持された情報の更新」などがより重要になってくるという仮説が考えられます。
補足記事
参考資料
『心の理論の生涯発達における実行機能の役割』(心理学評論刊行会)2021年11月6日検索
『幼児版ストループ課題の作成』(公益社団法人 日本心理学会)2021年11月6日検索
『幼児における「心の理論」と実行機能の関連性 : ワーキングメモリと葛藤抑制を中心に』(一般社団法人 日本発達心理学会)2021年11月6日検索
『実行機能の初期発達,脳内機構およびその支援』(心理学評論刊行会)2021年11月6日検索
『幼児における「心の理解」の指標としての嘘をつく行為と葛藤抑制能力との関連』(公益社団法人 日本心理学会)2021年11月8日検索