ワーキングメモリ

受動的・能動的統制群とは?|ワーキングメモリのトレーニング解説

公開日:2022年9月15日


 
 

実験群と統制群

統制群とは?

 統制群とは、何かの実験を行った集団(実験群)と比較をするための集団のことです。

 例えば「毎日ランニングをした人は健康になるのか?」という実験があった場合、毎日ランニングをしてもらう人達が実験群、ランニングをしないでもらう人達が統制群となります。

 
 

受動的・能動的統制群とは?

 受動的統制群とは、トレーニング機会を設けない集団のことです。

 例えば「毎日ランニングをした人は健康になるのか?」という実験があった場合、ランニングをしないで日常を過ごしてもらう人達が受動的統制群となります。

 これに対し、

 能動的統制群とは、実験意図とは異なるトレーニングをあえて行う統制群のことです。

 例えば「毎日ランニングをした人は健康になるのか?」という実験があった場合、ランニングではなくヨガや散歩をしてもらう人達が能動的統制群となります。

 
 
 

解説

受動的統制群と能動的統制群の違い

 何か特定のトレーニング効果を検証する場合、能動的統制群を用いたほうがより優れた実験と言えます。

 能動的統制群と異なり、受動的統制群では効果測定の判定において不明な点が残ります。
 具体的には以下の2点が考えられます。

トレーニング内容

 受動的統制群での比較では、トレーニング内容が適切であったかの判断ができない場合があります。

 例えば「毎日ランニングをした人は健康になるのか?」という実験があった場合、能動的統制群ならヨガや散歩など別の運動をしてもらいます。

 これに対して受動的統制群は何もしません。

 この場合、「ランニングをしたから健康になったのか、それとも運動ならなんでもいいのか」という判断がつかなくなってしまいます。

プラセボ効果

 受動的統制群と比較する場合、トレーニング群(実験群)のプラセボ効果を否定できません。

 例えば「毎日ランニングをした人は健康になるのか?」という実験があった場合、ランニングをしないで日常を過ごしてもらう人達が受動的統制群となります。

 このとき、ランニングをしたから健康になったのか、「自分は毎日運動しているんだ」という一種の達成感や気持ちの面だけで健康になったのか判断がつきません。

 より優れた比較研究を行う場合、能動的統制群を用いてなおかつモチベーションの変化なども合わせて測定しておくプラセボ効果の排除が必要です。

 
 

ワーキングメモリのトレーニングと統制群

 ワーキングメモリのトレーニングは能動的統制群と比較すると受動的統制群のときより遠転移の効果が小さくなるという調査結果があります。

 つまりトレーニング自体の効果というよりは、「自分は頭が良くなるトレーニングをしているんだ」という思い込み(プラセボ)が成績に影響している可能性を否定できないということです。

 人の知能の研究においてワーキングメモリのトレーニングは重要な分野の1つですが、その方法はまだ確立されていないというのが現状と言えます。

 
 
 

ワーキングメモリの解説

ワーキングメモリトレーニングの近転移・遠転移効果

 
 

ワーキングメモリのトレーニング

 
 
 

参考資料

『実行機能の初期発達,脳内機構およびその支援』(心理学評論刊行会)2021年11月6日検索

『ワーキングメモリトレーニングと流動性知能』(日本心理学会)2022年8月6日検索

『発達障害のある児童のワーキングメモリは改善できるのか–広汎性発達障害のある児童を対象とした試み』(東北福祉大学機関リポジトリ)2022年8月6日検索

『Training of Working Memory in Children with ADHD』(ResearchGate)2022年8月6日検索

『前頭前野とワーキングメモリ』(日本高次脳機能障害学会)2022年8月6日閲覧

『記憶とその障害』(一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)2022年8月15日閲覧

-ワーキングメモリ

テキストのコピーはできません。