実行機能

ワーキングメモリを鍛えることと子供の言葉の発達

公開日:2022年10月3日


 
 

ワーキングメモリーと子供の言語発達

 発達初期においてはワーキングメモリーの容量が少ない方が、文法の獲得がしやすい可能性が示唆されています。

 これはElman氏による「Starting small」という考えです。
 ワーキングメモリーや実行機能の未熟な時期が、発達過程において重要かもしれないという示唆を与えてくれます。

 
 
 

解説

実行機能の訓練

 実行機能の定義は諸説ありますが、オーソドックスなものとしては「目標志向的な、思考、行動、情動の制御」とされています。
 つまり目的のために自分の考えや行動や気持ちをうまくコントロールできる力と言えます。

 幼児期において実行機能が著しく低い場合、後の認知発達や社会性の発達に問題を抱える可能性があると考えられています。

 このため実行機能が特に苦手な子においては、実行機能のトレーニングが有意義であると考えられています。

 そしてここで議論になるのが、「では実行機能が平均的な子にも、実行機能のトレーニングをしたほうが良いのか」という点です。

 これについての仮説の1つが、幼児期に実行機能が年相応に未熟なことは、発達の過程として重要であるという考え方です。

 子供の頃に安易に自分を制御しないことで、好奇心のもとで行動し様々な経験を積むことができるのではないかということです。

 
 

Starting small

 上記の説の裏付けとまでは言えないまでも、支持する説の1つがElman氏による「Starting small」という考えです。

 この研究によると、発達初期においてはワーキングメモリーの容量が少ない方が、文法の獲得がしやすい可能性が示唆されています。

 ワーキングメモリーが少ないことは、一度に処理できる情報量が少ないことを意味します。
 これによって複雑な文構造を処理できないぶん、単純な文構造を処理する機会が増え、結果として文構造の基礎を獲得していくということです。

 ワーキングメモリーの容量が大きい場合、単純な文構造も複雑な文構造も処理しようとしてしまうため、結果として文構造の理解・獲得が難しくなってしまうと考えられています。

 
 
 

参考資料

『実行機能の初期発達,脳内機構およびその支援』(心理学評論刊行会)2021年11月6日検索

『自己制御と実行機能の関係の検証に係る諸問題』(心理学評論刊行会)2022年5月5日検索

『知的障害児のプランニングと抑制機能の支援に関する基礎的・実践的研究』(東京学芸大学)2022年5月5日検索

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