ワンにゃん課題とは?
ワンにゃん課題とは、幼児向けのストループ課題の一種です。
3~5歳頃の幼児の優性反応抑制の力を見るために考案されました。
しかしながらあくまで考案された1つの手技であり、現場で広く代表的に使われている測定法かというとそうとは言い難い面もあると思います。
解説
ストループ課題とは?
ストループ課題と言うと、一般的には色名ストループ課題がよく例に挙がると思います。
色名ストループ課題とは、例えば「赤」と書かれた青色の文字の色を答える課題です。
文字の色を答える課題なので当然この場合は「青」と答えないといけないわけですが、文字自体は「赤」と書かれているため被検者ついつい「赤」と答えてしまいます。
ストループ課題は上記のような性質から、実行機能における「優性反応抑制」能力を見る検査と位置付けられます。
「優性反応抑制」とは先につい表れてしまう自分の反応を冷静に制御できるかという力です。
色名ストループ課題はついつい文字を読んでしまう「優勢反応」を「抑制」し、あくまで文字の色を答えてもらいます。
ストループ課題を幼児に行う場合の問題点
このようにストループ課題は「ついつい出てしまう反応」を前提としています。
しかしながら、まだ文字を読むことが定着しきっていない幼児期においては、文字と色を使った通常のストループ課題では優勢反応が成立しません。
このため、子供に優勢反応を生じさせるような課題設定、つまり幼児版のストループ課題が必要になってきます。
海外も含め、幼児向けのストループ課題で有名なものは「昼/夜ストループ課題」などがあります。
昼/夜ストループ課題は月の絵が出てきたら「昼」、太陽の絵が出てきたら「夜」と反対のイメージを答えます。
文字ではなく月や太陽の絵で答えてもらうため、色名ストループ課題より昼/夜ストループ課題は幼児に適用できると考えられています。
しかしながら、そもそも月の絵が夜、太陽の絵が昼を子供に強く連想させるのかは諸説あり、日本では改良の必要性が指摘されることもあります。
ワンにゃん課題の考案
こういった背景から、名古屋女子大学の矢野円郁氏らが考案したストループ課題がワンにゃん課題です。
ワンにゃん課題の内容は、写真と泣き声がランダムに組み合わさって呈示される状態で、写真の動物を答えてもらいます。
つまり、犬の絵と「ワン」という鳴き声が提示されたときは当然「犬」と答えなければならないですが、犬の絵と「にゃん」という鳴き声が聞こえた場合も「犬」と答えないといけません。
ワンにゃん課題では犬の絵で「ワン」あるいは猫の絵で「にゃん」と呈示する一致の問題と、それぞれの鳴き声が違う不一致の問題をランダムに織り交ぜて出題していきます。
一致と不一致の問題それぞれ8題、計16問で行った場合、矢野氏の研究では3~4歳児の平均正答数は11.7問だったそうです。
ワンにゃん課題は鳴き声が聞こえた直後に絵を呈示するものの、そのわずかな時間でも絵を見る前に鳴き声を答えてしまうフライングが観測される子もいるようです。
このあたりの呈示の仕方などが、ワンにゃん課題の評価バッテリーとしての今後の課題とされています。
参考資料
『心の理論の生涯発達における実行機能の役割』(心理学評論刊行会)2021年11月6日検索
『幼児版ストループ課題の作成』(公益社団法人 日本心理学会)2021年11月6日検索
『実行機能の初期発達,脳内機構およびその支援』(心理学評論刊行会)2021年11月6日検索