要求の指さしについて
要求の指差しの発達過程
「要求の指差し」は文字通り「あれ取って~」など他者への要求を伝えるために行う指差しのことを言います。
定型発達においては11か月~1歳頃に出現すると考えられています。
「要求の指差し」は後に出現する「応答の指差し」などと比べると一方的な感じが否めない指差しですが、他者へ要求を行うという確かな対人意識の芽生えでもあります。
解説
要求の指差しとは?
指差しの発達過程の分類は文献によって多少異なります。
しかしながら、比較的詳細に分類すると子供が初めに行う指差しは「漠然とした指差し」になります。
「漠然とした指差し」は文字通り興味の対象に漠然と、しかし自発的に指をさす行為です。
このため他者への意思伝達の意図は不十分です。
そして指差しの発達の第2段階目が「要求の指差し」になります。
冒頭の述べた通り要求の指差しは他者への伝達意図がはっきりしています。
このため他者へ何かを伝えようとする指差しは要求の指差しが実質最初の段階になります。
要求の指差しの詳細
漠然とした指差しと要求の指差しでは、子供がその意図を他者へ伝えようとする意識が異なります。
これは対人意識の芽生えでありコミュニケーション面の発達でもあります。
要求の指差しでは単に対象を指差すだけでなく、相手の顔を見るか、相手が承諾するまで指差しを続けるか否か、言葉を発するかどうかも興味深い所見となります。
例えば高い所にあるお菓子を取ってほしい際に棚を指差す行為は要求の指差しです。
この際に親の顔をしっかり見ながら棚を指差しているのであれば、そうでない場合よりも相手をしっかり意識していると言えます。
親が対応してくれるまで指をさし続けるか否かも、その子の期待の表れと言えます(指し続けるのが長ければ長いほどいいというわけではありません)。
また、指をさしながら声を出すか否かも、その後の言葉の発達の重要な所見となるでしょう。
声を出しているのであれば、時期に言葉での要求ができるようになるかもしれません。
参考資料
『自閉症幼児における応答の指さしと言語獲得』(神戸大学学術成果リポジトリ)2020年7月2日検索
『1歳児における叙述の指さしと他者との共有経験理解との関連』(J-STAGE)2020年7月2日検索
『指さし行動の発達的意義』(J-STAGE)2020年7月2日検索
『1歳6か月児の健康診査』(奈良県)2021年9月25日検索