様式の公準とは?
言語学者のポール・グライスは、会話のルールとして「協調の原理」という考え方を挙げています。
「協調の原理」は「質の公準」「量の公準」「関連性の公準」「様式の公準」の4つの下位原則があります。
「様式の公準」とは、スムーズな会話のためには曖昧(あいまい)な表現は避け簡潔にわかりやすく話すことが大切であるとする原則です。
ちなみに「様式の公準」は「様式の格率」「様式の公理」「様態の公理」など名称が微妙に異なる場合もあります。
解説
「様式の公準」の大切さ
会話というのは一種の共同作業であり、互いの協調性の下で成り立ちます。
このため会話においては自分の意図や話している内容を相手が理解しやすいように配慮することが大切です。
必要でないにもかかわらず、曖昧な表現をしたり複数の意図に取れる言い方をすることは、会話を不要に複雑にし円滑なコミュニケーションを阻害すると考えられます。
「様式の公準」は相手にわかりやすく伝える上で大切な原則と言えるでしょう。
「様式の公準」は4つの下位原則の中でも比較的多義的な原則です。
「協調の原理」と「含意」
グライスは、「協調の原理」が前提となることで「含意」が成り立つと考えています。
ここで言う「含意」とは含まれた意味、つまり言葉にされていない言外の意図を指します。
「協調の原理」という会話の基本があるからこそ、それから外れた表現に対して「何か意図があるのでは」と人は違和感を持てると考えられます。
A「今日ってBさん休むって言ってたっけ?急にどうしたんだろう」
C「まあ、いろいろあるんじゃないかな。」
例えば上記のような会話は「様式の公準」に反していると言えるでしょう。Cさんの返答は曖昧です。
しかしCさんが「あえて」曖昧な返答をしていることで、「Bさんが休んでいる理由についてCさんは心当たりがある」「Bさんが休んでいる理由はあまりはっきりと言えないことである」などの予想ができます。
このように、「協調の原理」を前提にできるからこそ「含意」に気づけると言えるでしょう。
「協調の原理」の解説
参考資料
『質問―応答関係検査1―検査の作成とノーマルデータ―』(日本音声言語医学会)2023年11月13日閲覧
『質問―応答関係検査2―質的分析と会話能力の段階設定―』(日本音声言語医学会)2023年11月13日閲覧