心理学

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あえてスケジュールを空けることでパフォーマンスが上がる(手術室の事例)|行動経済学

公開日:2023年6月9日


 
 

あえてスケジュールを空けることでパフォーマンスが上がる

 時間や労力をあえて「緊急事態のため」に空けておくと、結果としてパフォーマンスは上がると考えられます。

 真面目な人ほど時間や労力を事前に計画的に全て割り振ってしまいがちです。
 しかしタイトなスケジュールは緊急事態に対応できず、結果として予定の組み直しに労力を使ってしまいます。

 この類の問題で非常に示唆のあるセント・ジョンズ地域医療センターの事例を下に、ゆとりの大切さについて考えます。 

 
 
 

研究

手術室の事例

 セント・ジョンズ地域医療センターでは、手術室の稼働率を上げるため、あえて1室を使わずに空けておく決断をしました。

 この医療センターでは手術が常に予約がいっぱいになっており、それが課題となっていました。

 当然、ただでさえ予約がいっぱいなのに手術室を1室使わずに空けておくなんてと当初は反感もあったそうです。

 しかしながら、これを実行すると手術の件数が上がりました。

 手術室を1室あえて空けることで、予定していなかった急遽の手術に以前よりスムーズに対応できるようになりました。
 結果としてこの病院が受けられる手術は約5%増加し収入も増えたそうです。

 
 

ゆとりの大切さ

 上述の医療センターは手術室の数は同じでありながらも、その運用の仕方でパフォーマンスを変えました。

 手術室を1室空けることで、現場のスタッフの負担は減り、よりゆとりを持って計画的に手術に臨むことができました。
 そして結果として手術の件数も収益も増加するに至ります。

 あえてゆとり持つ勇気と冷静さは、限られたリソースで効率良く結果と出すためにはとても大切です。

 手術室を1室使わずに空けるという行為は、忙しい状況のときほど決断できません。「ただでさえ忙しいのに」と思ってしまいます。
 しかしそこであえてゆとりを積極的に作ることが、結果としてパフォーマンスを上げることにつながります。

 
 
 

参考資料

センディル・ ムッライナタン、エルダー・ シャフィール『いつも「時間がない」あなたに 欠乏の行動経済学』早川書房、2015年 p234

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