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「す」の比較・照合
このステップでは「す」の耳の訓練の最終段階である比較・照合を行います。
耳の訓練における「比較・照合」の力とは、自分の発音と標準音(あるいは他者の発音)を比べ、間違っていたら訂正する力のことです。
解説
意義・意図
子供の誤った構音が定着する理由
比較・照合機能が低下していることは、構音障害の1つの原因と考えられます。
自分自身は正しく構音できていると思って誤った構音を繰り返し、それが定着している子供は少なくありません。
比較・照合機能を獲得した構音
比較・照合する力を訓練することで、子供は話しながら自分の言葉を自分の耳で聞く力が養われます。
それは構音を誤った際に自身で気づき訂正する力につながります。
正しい発音を長期的に定着させるには、この比較・照合の能力が必要不可欠です。
耳の訓練の大切さ
構音訓練のゴールは正しい音を出せるだけでなく、練習が終了してもその音を維持できることです。
親が「音が出せるようになったから」と早々に構音訓練やめ、音が前の状態に戻ってしまう子が時々います。
しかし子供自身が自分の構音に気づきを持たなければ正しい音は維持されないでしょう。
子供自身が「気づき」を持ち「修正」できるための練習が耳の訓練であり、その採取段階がこの比較・照合です。
構音訓練は正しい音を出すための「口の訓練」に意識が向いてしまいがちですが、長期的には「耳の訓練」も非常に重要です。
練習方法
「す」を含む短文や文章の音読、あるいは自由会話を行います。
そして構音できていなかったら自分自身で修正してもらいます。
自分で気づいて自分で修正できた場合は、指導者がしっかり褒めてあげて習慣形成を行っています。
一方で誤った音に気づかなかった場合は、「え、ちゅいか(すいか)?」のように聞き返して気づきを促します。
この指摘については当然ながら多すぎれば子供は嫌になってしまうでしょう。
子供がある程度は構音可能で、しかし文章や会話で時折間違うくらいの頻度でなければ比較・照合の訓練は成立しません。
他の段階もそうですが、構音訓練は耳の訓練と口の訓練を併行して行います。
比較・照合の段階は、文章音読や会話にておおむね構音ができるようになっている状態で取り入れます。
ちなみに、子供が自己修正できた際に上手に褒めることは、指導者や親の腕が問われます。
多様な褒め言葉を指導者が持っていることは、構音訓練に限らず育児・教育全般において重要です。
「上手にできたね」の一辺倒では誰もが白々しく感じてしまうでしょう。
「上手にできたね」「よく気づけたね」「前よりもできるようになったね」
「アナウンサーみたいに上手な音が出ているね」
同じ「褒める」でも「表現」のレパートリーがあることで、よりモチベーションを促せるでしょう。
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構音訓練の一覧
参考資料
湧井豊『構音障害の指導技法-音の出し方とそのプログラム-』学苑社、1992年