外見に対する自己理解の特徴
一般的に思春期は、自分の外見に対して敏感になる時期です。
自閉症スペクトラム障害(ASD)の思春期も同様の傾向が見られますが、定型発達と比べると外的所属への注目も高い傾向があります。
つまり、定型発達において思春期は(二次性徴の兼ね合いもあって)社会的な立ち位置よりも自身の容姿や身体面に注目がいきがちです。
一方で自閉症スペクトラム障害の人の場合、外見と同じくらい社会的な立ち位置も注目している傾向があります。
解説
発達障害と自己理解の研究
日本発達心理学会の論文に、自閉症スペクトラム障害者の自己理解について調査・研究したものがあります。
定型発達の人と発達障害者を対象に、自己理解について答えてもらいその回答傾向を分析したものです。
「自分はどういう人間なのか」自覚できることは、アイデンティティを確立する上で重要な要素の1つでしょう。
そして自閉症スペクトラム障害者の場合、定型発達と比べて自己理解に特徴的な要素があると考えられています。
外的所属の重視
定型発達と異なり、自閉症スペクトラム障害の人は自己理解において身体的特徴と外的所属に対する言及に差がなかったようです。
自閉症スペクトラム障害の人は、身体的な面について自己理解が乏しいのではなく、同じくらい外的所属を重視している傾向がうかがえます。
外的所属に関する言及は、「どんな人になりたいか?」といった質問でよく見られるようです。
このような質問に対して、一般的な職業イメージや一義的な叙述が比較的見られました。
自己の理想として具体的な所属や職業を重視する背景には、障害を抱えるゆえの将来の不安が1つの要因として考えられます。
発達障害と自己理解
参考資料
滝吉美知香、田中真理(2011)『思春期・青年期の広汎性発達障害者における自己理解』(一般社団法人 日本発達心理学会)2024年9月14日閲覧