前のステップ
「し」単音の誘導と固定
前回のステップで「せ」の音の練習が完了しました。
サ行の別の音の練習に取り掛かります。
このステップでは「し」の単音の誘導と固定を行っていきます。
波及効果によりすでに音が出ている場合は、練習内容も柔軟に変えていきます。
解説
意義
「し」の音は他のサ行の音(さ・す・せ・そ)と構音点が異なります。
「し」はどちらかと言えば「しゃ・しゅしょ」に近い音です。
構音点が異なるため「し」は「さ・す・せ・そ」が終わってからか、(定型発達において「し」のほうが早期に獲得されるので)先に行います。
いずれにせよ「さ・す・せ・そ」と「し」は分けて練習を行うことがポイントです。
「さ・す・せ・そ」をやっている途中で「し」の練習を行ってしまうと、構音点が異なり子供が混乱してしまうかもしれないからです。
指導方法・手順
キーワードがある場合
すでに「し」が構音できている、構音できる単語がある場合はその単語をキーワードとして用います。
例えば子供が「しか(鹿)」という単語は言えているとします。
この場合まずは「しーかー」と伸ばすように前後の音を離していきます。
そして今度は「かー」の部分だけ(口の形はしますが)音を出さないようにします。
このようにして「し」だけを発音できるようにします。
上記ができるようになったら今度は「あーしーかー」のように(「かー」は口の形だけ)逆に音を付け足しても言えるようにしていきます。
このようにしてキーワードとなる単語を使って音の分離・接合をしていきます。
単音への誘導
キーワードとなる単語がない場合、なかなか「し」の音が出ない場合は、漸次接近法(ぜんじせっきんほう)にて単音を誘導していきます。
すでに「ち」の構音ができる子の場合は、「ちー」と引き伸ばすことで伸ばした部分が「し」になる場合があります。
口形をそのままに一度音を止め、すぐに音をまた出させます。
この繰り返しにより「し」を誘導します。
「ひ」の構音ができる場合はささやき声から「し」を誘導する方法もあります。
ささやき声を出させた状態で、指導者が子供の下唇を軽くつまんで正中にしぼるような形にしてあげると、「し」が出やすくなる場合があります。
ただしこの手法は側音化構音の傾向がある子供には行わないほうがよいでしょう。
いずれにせよ、慣れてきたら「し、し、し」など連続で出せるようにしていきます。
目安としては50回連続で正しく構音できるよう目指し、できるようになったら次のステップへ進みます。
工夫・遊び
「し」だけで歌を歌う、会話をするなど遊びは単音の練習として有意義でしょう。
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構音訓練の一覧
参考資料
湧井豊『構音障害の指導技法-音の出し方とそのプログラム-』学苑社、1992年