物を床に投げる子
特別支援教育は発達障害の療育現場で、机の上にある物を床に意図的に落とす子がしばしばいます。
子供が物を床に落とし、先生が拾い、また子供が床に落とす。
それが習慣化してしまい、ある種の遊びになってしまい、子供が本来やるべき活動や課題をしないことがあります。
物を落とすという行為自体は、1歳未満の子には成長過程で見られる行動の1つです。
しかし発達障害児の療育や特別支援教育の現場では、それとは異なり物を落とすという行為が課題から逃れるための方法や他者の注目を集める方法になってしまっている場合があります。
子供が物を落としてしまうことへの対応方法を、応用行動分析(ABA)にて考えていきます。
物を床に落とす子へのABA的アプローチ
落ちない物を使う
物理的に落ちないようにするという環境設定も、冗談のようですが方法論の1つです。
物をテーブルに固定する。
落ちないほどがっしりとした物を使う。
こうしてまず、ある活動を行う際にそれを落とすという選択肢自体をなくします。
そしてそれをしばらく継続していき、落とすことができる物でも「物を落とす」ということを思い出さないくらい習慣化していきます。
手渡しで課題を行う
例えば型はめやパズルなどの課題を行っていて、そのパーツを一気に机から落とす子がしばしばいます。
しかしそういった子でも、パズルのピースが1個だけなら特に落とさないことがあります。
課題の数が多すぎると、それに嫌気がさして床に落としてしまうことがあります。
まずは1つピースを手渡ししてパズルをしてもらいます。
それができたらまた1つ渡します。
繰り返しできるようであれば今後は2つ渡してみます。
2つ渡してできるようなら、その後しばらくして今度は3つ渡してみます。
課題はできることから、少しずつ取り組みます。
いきなりたくさんの課題を呈示されては、子供も大人も嫌気がさすものです。
課題の難易度を下げ、できたら褒める
課題が難しすぎれば嫌になってしまいます。
床に物を落とすということは、ただでさえその子は机上課題の集中力や粘り強さ、「自分はこれができる」という確信や自信が希薄です。
まずはその子が簡単にできることでもいいので、机上課題の習慣をつけます。
習慣をつけることと、課題の難易度を上げることは分けて練習します。
まずは習慣をつけていきます。そのためには扱う問題は簡単なものにします。
そしてたとえ簡単な問題でも、できたら褒めてあげます。
「できたね」と一声かけるだけでも違います。
物事に集中することを「フロー」と言ったりします。
フロー状態が発生する条件の1つに「明確なフィードバック」があります。
つまり、子供が何かをできたときに速やかに声掛けを行うことで、子供はそれが「できた」「褒められた」という実感が増します。
こうして机上課題の習慣を強固なものにしていきます。