SST(ソーシャルスキルトレーニング)の会話劇です。
昼下がりの午後、ある飲食店で二人がランチをします。
SST(ソーシャルスキルトレーニング)は発達障害の方のだけでなく、グレーゾーンの方やコミュニケーションが苦手な方にとっても有効です。
Aさん「私はこの日替わりランチにしようかな」
Bさん「なににしよー」
面倒見がいいAさんと、グレーゾーンぎみのBさん。
二人は仲良しです。
【今日のランチは何にしよう】
Aさん「メニュー決めた?」
Bさん「まだー」
Aさん「けっこう迷ってるね」
Bさん「どれもおいしそうで。何を食べようか迷うよー
Aはいつもすぐ決めることができて決断力があるね」
Aさん「んー、確かに私はそんなに迷わずメニュー決めちゃうけど、それって決断力があるってのとは違うかな―」
Bさん「どういうこと?」
【簡単に選ぶ】
Aさん「つまりね、外食でメニューを選ぶときは基本食べたいものを選んでいいんだけれど、それだけが判断材料じゃないのよ」
Bさん「???」
Aさん「例えばここは初めてくるお店だからメニューを端から端まで吟味してもよくわからない。
それだったらざっと見てだいたいで決めた方がスムーズなの。
私はパスタが好きだから、全部のメニューを選択肢にしないでパスタのセットか日替わりランチにしようって考えたのね。
それで日替わりランチのほうが初めて来るお店では失敗しなさそうだから日替わりランチにしたの。」
Bさん「失敗しなさそうって?」
Aさん「初めてのお店って雰囲気がわからないじゃない?
パスタでもお店によって量が違うし。
これとこれにしようかなって頼んだら意外と量が思ったのと違ったり味が合わなかったり。
あとお店がそのメニューを切らしてたり。
でも日替わりランチってお店の人がバランスよくメニューを組み合わせてくれているからそういうことが少ないのね。」
Bさん「なるほど」
Aさん「いかに選択を簡単にするかって意外と大切よ」
【本意と妥協は矛盾しない】
Bさん「でも私は食べたいものを食べたいなあ。
妥協して注文したくないもの」
Aさん「選択を簡単にすることと、好きな選択をすることは必ずしも矛盾しないものよ」
Bさん「え?」
Aさん「だってメニューから選んでいる時点で、選択肢が限られているんだから人は妥協してるでしょう?
でもみんなメニューから好きなものを選べば「自分が妥協した」なんて感じない。」
Bさん「確かに」
Aさん「結局は意識の問題なの。
人は無意識の妥協は許せてるの。」
Bさん「ふむふむ」
Aさん「人はどれだけ意識しても、無意識のところで妥協しているの。
大切なのは妥協しない選択をすることじゃなくて、妥協の範囲を自分で調整できるようになることなのよ。」
Bさん「妥協の範囲を自分で調整する?」
Aさん「例えば誰かとランチをすることは、
おいしいものを食べることだけが目的じゃないわ。
スムーズに注文をして場の雰囲気を大切にして、相手と楽しい時間を過ごすことが目的でもあるわ。」
Bさん「うん」
Aさん「相手と楽しい時間を過ごすためには、自分が食べたいものを食べるためだけに注文にたくさんの時間を使うというのはベストの選択ではないってわかる。
そこまで目的がはっきりすれば、簡単にメニューを選んでしまうことにも抵抗はなくなるわ
」
Bさん「確かに。
私も日替わりランチにする!」
Aさん「別に人と同じじゃなくていいのよ(笑」
Bさん「じゃあこのミートドリア(笑」