オトナ帝国の逆襲は子供向けか?
クレヨンしんちゃん映画の中でも「オトナ帝国の逆襲」は異彩を放つ作品です。
放送当時の親世代を意識した世界観や設定、子供っぽくありながらも非常に整合性のとれた構成。
「オトナ帝国の逆襲」は「子供も大人も楽しめる作品」の域を出て、「子供向けと見せかけて大人を楽しませる作品」になっていると思います。
解説
「オトナ帝国の逆襲」の概要
クレヨンしんちゃん映画の9作目にあたるのが「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲」です。
懐かしさにより子供に戻ってしまった大人達と戦うしんちゃん達を描きます。
大人に立ち向かう子供というシチュエーションはアニメにおいてよくある世界観ですが、「オトナ帝国の逆襲」はそこに大人が思わず共感してしまう「郷愁」の要素を取り入れた点が大きいです。
クレヨンしんちゃん映画においてこの「オトナ帝国の逆襲」と10作目にあたる「アッパレ!戦国大合戦」は2大名作とされることが多いです。
この背景には「子供向けと見せかけて大人を泣かせに来る」作風があり、その「泣かせ」が巧みであることが挙げられます。
作品の解説
オトナ帝国の逆襲は子供が大人に立ち向かうドタバタ劇であり、そのにぎやかさは子供が楽しめるものです。
しかしながら、オトナ帝国の逆襲は子供が気にしないような細かな整合性をとる演出が多いように感じます。
子供向けにそこまで作りこむ必要があるのかという演出が多々あり、子供よりむしろ親の方を意識した作品であることがわかります。
例えば作中で大人達は強烈に懐かしさを感じる「匂い」により洗脳され子供の思考に戻ってしまいます(体は大人のまま)。
そしてこの匂いは作中の悪役(?)であるケンが開発したものです。
大人を洗脳するのに突拍子のない「魔法」ではなく、あくまで(現実味はありませんが)科学を用います。
しかも「匂い」と表現することで大人の多くが感じたことがある「理屈はわからないけれどなんだか懐かしい」という感覚で共感を誘います。
このように細かな世界観の設定で大人が見ても不自然でない演出を作り、大人をしらけさせない工夫がなされています。