SST(ソーシャルスキルトレーニング)は発達障害の方のだけでなく、グレーゾーンの方やコミュニケーションが苦手な方にとっても有効です。
グレーゾーンの方とは、発達障害の程度が微妙で診断に至らないような方のことです。
【円滑に社会で生きていきたい】
良好な人間関係を築きたい。
社会性を身につけたい。
コミュニケーションが上手くなりたい。
これらにはソーシャルスキルやコミュニケーションスキルが必要です。
ではなぜソーシャルスキルやコミュニケーションスキルが低いのでしょう?
それは「気づけていない」からです。
もっと言うと「気づけていないことに気づいていない」のです。
【そんな概念があるなんて知らなかった】
例えば話すときに妙に人と近い人がいます。
家族や恋人でもないのに話す距離が妙に近い。
こちらがそれとなく距離をとるとまた距離を縮めてくる。
相手はこの距離の近さに違和感を感じていない。
この人は距離が近いことに違和感を感じていません。
もっと言うと、別に近づきたいとも思っていないのです。
その人にとって人との物理的距離を気にするというのがそもそも頭の中にないのです。
ある日、ズバズバ言う人が教えてくれます。
「そんな近づいて話されても気持ち悪い」
そのときにその人は「はっ」と気づくのです。
人は普通、相手との距離を気にしているのだと。
この人はそれ以降、人との距離も気にすることができるでしょう。
ふとした時に忘れてしまい、つい人との距離をまた近くしてしまうこともあるかもしれません。
しかしもうこの人は「人との距離が近すぎることは違和感があるしそれをすることは恥ずかしいことだ」という概念を知っています。
だから自分で気づくこともできます。
【言えばわかる、言わなきゃわからない】
「言えばわかる。言わなきゃわからない人」
「言わなくてもわかる人」
これって小さいようで大きいです。
世の中って「言わなくてもわからないといけない」ことだらけです。
「言わなきゃわからない人」にとって「言わなきゃわからないこと」って氷山の一角なのです。
周りが「言わなくてもわかる」のに、その人は「言わなきゃわからない」。
でもみんな「言わなくてもわかる」から誰も言わない。
「言わなきゃわからない人」はわからないまんま。
「言わなきゃわからない人」は誤解したまま別の「言わなきゃわからないこと」が増えていきます。
こうして「言わなきゃわからない人」は「言わなくてもわかる人」とは世界が違って見えてしまいます。
【人にはそれぞれ認知する領域としない領域がある】
人にはそれぞれ認知する領域としない領域があります。
認知の取捨選択です。
例えば女性は男性より色彩感覚が優れています。
化粧品売り場にたくさんある口紅。
男性にとっては「大して変わらない赤」ですが、
女性にとっては「使い分けたい赤」なのです。
認知の領域に差があるのは自然なことです。
しかしソーシャルスキルが苦手な人はこの認知の領域にズレがあります。
気にしないとけないところを気にできないし、
気にしなくていいところを気にしてしまいます。
何を気にしなくてよいのか、
何を気にしないといけないのかということではありません。
周囲が気にしているところを気にできていない。
周囲が気にしていないところを気にし過ぎている。
相対的な問題なのです。
【「本人は気づいていない」ことが最大の問題】
たとえコミュニケーションがはじめは未熟でも、「気づく力」があれば次第に上達します。
しかし「気づく力」がないと人に言われるまでいつまでたっても上達しません。
そして重要なソーシャルスキルやコミュニケーションスキルのほとんどを、人はわざわざ口では教えてはくれません。
先ほどの「話すときに距離が近い」例ですと、その人は言われればすぐに納得しましたが、自分ではずっと気づけていませんでした。
言ってわかる・わからないという能力の問題ではないのです。
自力で気づけないというのが発達障害やそのグレーゾーンの人たちがソーシャルスキルで苦労する一番の要因のひとつなのです。