理学療法士(PT)と柔道整復師
どちらも骨や筋肉を見てもらったり体の痛みをとってもらったり・・・
2つの資格の違いがわからない人も多いのではないでしょうか。
【はじめに・・・】
病院などに勤めリハビリを行う理学療法士。
整骨院を営む柔道整復師。
理学療法士と柔道整復師はどちらも国家資格です。
しかしこの2つの資格はもちろん違いがあります。
【理学療法士とは】
理学療法士とは「立つ」「歩く」「座る」などの人間の生活に必要な基本的な動作のリハビリを行います。
リハビリ職における国家資格のひとつです。
補足記事:理学療法士とは?
【柔道整復師とは】
柔道整復師は「打撲」「ねんざ」「脱臼」などの症状に対する応急処置的な対応を行います。
ここで「応急処置的」と書いたのは、柔道整復師はレントゲン撮影や骨折の手術などできない範囲があるからです。
柔道整復師も国家資格です。整体師という似た言葉もありますがこちらは正式な国家資格ではありません。
【違いその1.開業権と保険請求】
理学療法士に開業権はなく、医療保険の請求は単独ではできません。
基本的に医師の診断と診察が必要です。
一方、柔道整復師は開業権があり単独で保険請求ができます。
そのため理学療法士は病院に勤め、柔道整復師は整骨院を開業することが多いです。
補足記事:業務独占、名称独占とは?
【違いその2.資格のルーツ】
理学療法士はアメリカのけがをした軍人のリハビリ(社会復帰)がルーツとなっています。
一方柔道整復師は柔道の怪我の対応がルーツです。
基本的に資格というものは国が変わると制度も変わります。理学療法士も柔道整復師も日本の免許は海外では使えません。
理学療法士と柔道整復師という仕事の認知を考えると、やはり柔道整復師のほうがそのルーツの関係で日本固有の資格という印象が強いです。
ちなみに海外では柔道整復師にあたる仕事はカイロプラクティックなどがあります。
【その他の話】
日本の理学療法士は海外に比べるとその社会的地位は低いです。
日本特有の柔道整復師の資格が影響しているのでしょうか・・・
【違いのまとめ】
理学療法士も柔道整復師もどちらも国家資格であり人の体の痛みや不自由さに対応する専門家です。
そのため実際の処置は類似する場合があります。
理学療法は軍人のリハビリという西洋医学が発端。
柔道整復師は柔道の怪我の対応という東洋医学が発端。
理学療法士には開業権や保険請求権がありません。
柔道整復師にはあります。
理学療法士は医師の診断・処方の下リハビリを行います。
柔道整復師はねんざや打撲に対して対応を行いますが、レントゲンでの診断や手術など根本的な診断・治療はできません。
【もしも将来なるならどっちがいい?】
少し脱線して就職活動的な話に。
理学療法士と柔道整復師、人体の医学的ケアに興味がありどちらかになりたいと思った時、どちらがいいでしょう。
最終的には個人の判断でしょうが、客観的な違いを書いていきましょう。
【安定した勤め人の理学療法士】
先ほど書いた通り、理学療法士には開業権がないので、病院などに勤めることがほとんどでしょう。
「将来独立開業したい!」と思う方は柔道整復師になる方が無難です。
しかしながら病院に勤めるということは経営者としてのプレッシャーも経営上の雑務も考えなくていいです。
つまり理学療法というものに集中できるということです。
また、資格あっての仕事なので普通のサラリーマンより転職もしやすいでしょう。
【独立できる柔道整復師】
柔道整復師は独立開業できるのが最大のメリットです。
一国一条の主を目指したい方は挑戦し甲斐があるでしょう。
しかし、柔道整復師は近年飽和状態にあるので競争が激しいのも事実です。近所に整骨院ってけっこうたくさん見かけますよね。
また、柔道整復師は保険料の問題もあります。
基本的に柔道整復師の治療はけがや打撲など一時的な症状に対する治療なんですね。
つまり「なんとなく肩がこっている」といった慢性的な症状には保険がおりないわけです。
でも実際は「重い物を持ったときに腰を痛めた」などそれらしい理由づけをして「一時的な症状」扱いにして保険をおろしているわけです。
これがしばしば整骨院が「保険が使えるマッサージ」と言われる理由です。
近年の医療費の増加問題に伴い、この保険のおろし方が問題になっています。
柔道整復師は独立開業という夢のある資格ですが、
一方で「競争」と「医療保険問題」のダブルのリスクがある資格であることも頭に入れておいた方がよいでしょう。
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