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子供の嘘と発達の関係
嘘をつくという行為はそれなりの言語能力・思考能力・記憶力が必要です。
そう考えると嘘をつくという行為は子供の発達と捉えることもできます。
解説
子供の嘘の頻度と質
4歳児の場合、平均して2時間に1回の割合で嘘をつくと言われています。
しかし3,4歳時の嘘は下手です。
親が現場を目撃しているのに「私、お菓子なんて食べてない」と嘘をつきます。
親が問い詰めると「食べちゃった」と簡単に白状したりします。
まだ矛盾のない嘘をつきとおすほどの認知レベルに至ってないのです。
これが年齢を重ねていく上で変化が見られます。
6歳児になると1時間に1回嘘をつくようになります。
6歳前後になると嘘が巧みになります。
先ほどの例で言うと親が見ていないことを把握した上でお菓子を食べる。
問い詰めれば、「見ていないけれど、もしかしたらいつの間にか猫が来たのかもしれないね」とそれらしい矛盾のない話を作り上げる。
ずいぶんと嘘がうまくなるのです。
嘘は特定の子供だけに見られる行為ではありません。
全体でみると子供の96%に嘘が見られます。つまりほぼ全員ということになります。
嘘をつくにはあたかも本当のような話を作りだす力が必要になります。
嘘をつくことが正しいか正しくないかはおいておいて、
嘘をつけるというのは子供の重要な発達の指標と捉えることができます。
子供にとっての嘘の善悪
クイーンズランド大学のキャンディダ・ピーターソンの研究で、様々な種類の嘘が出てくるビデオを様々な年齢層の人に見せてその感想を聞く実験がありました。
様々な嘘とは、悪意のある嘘や善意のために仕方なくついた嘘などです。
実験の結果、嘘に対しても嘘をついた人に対しても子供の方がはるかに不寛容でした。
大人よりも子供の方が「嘘は悪いこと」と決めつけ、「嘘つきは悪い人」と決めつける傾向が強いのです。
子供にとっての嘘の定義
「今度の日曜日は一緒にキャッチボールをしよう」
お父さんが子供と約束したとします。子供はとても楽しみです。
しかし日曜日、会社の人に急な不幸が。お父さんは葬儀に出かけます。当然キャッチボールは中止。
大人にとってこれは「仕方がないこと」です。しかし子供にとっては「お父さんは嘘をついた」なのです。
そして同時に、「お父さんは嘘をついたのにそれを仕方がないなんて言っている」ととらえるのです。
嘘の捉え方の発達
子供が成長の中で嘘をつく一方で、嘘に対する考え方も変わってきます。「嘘をつかれること」がどういうことなのかを考えるようになります。
しかしこれは、だんだんと「嘘をついてはいけないんだ」と気づくことではありません。先ほど書いた通り、子供は最初の時点で大人より「嘘はついてはいけない」と考えているからです。
子供は成長する中で、「嘘は絶対ついてはいけない」という捉え方から「状況によってはついていい嘘がある」という捉え方になるのです。
嘘の卒業
子供の発達にとって嘘は重要です。
しかし、嘘を全面的に肯定はできないのも親の心情です。
嘘ばかりついていても、6歳前後にはおよそ3分の1の子供は嘘を卒業してしまいます。
一方、7歳以降になっても頻度多く嘘をつく子は嘘をつく習慣が長引きます。これは全体の子と3分の1に該当します。
子供が嘘をつくのは嘘をつかないといけないほど何か重要なことを隠したいときです。子供が嘘をつく場合はその背景に何があるのかを親は考える必要があります。
嘘をつくことが処世術として習慣化してしまうと、子供の嘘つきは長引きます。
では、子供が嘘を卒業するために親がしてあげられることはなんでしょう?
次回に続きます。
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