集中ボーナス
時間がない・お金がないといった「欠乏」は、人の集中力を一時的に高める場合があります。
時間がない人は1分の時間に集中し、お金がない人はその1円を何に使うか慎重になります。
欠乏が集中力を促すのは、良い面も悪い面もあります。
研究
アングリー・バード風の実験
行動経済学の研究に際して、センディム・ムッライナタン氏らはゲーム「アングリー・バード」を真似た「アングリー・ブルーベリー」というゲームを作り実験に用いました。
このゲームはブルーベリーをワッフルに向けて撃つという要するにシューティングゲームで、被験者の集中力を要します。
ブルーベリーの持ち数をムッライナタン氏らは多い群と少ない群に分けて実験を行いました。
結果は当然ながらブルーベリーの持ち数が多い方がよりたくさんのワッフルを撃つことができます。
しかし、持ち数が少ない被験者の方が射撃の正確さは上でした。
ブルーベリーの持ち数が少ない被験者の方がその貴重さを意識し、より高い集中力を発揮したと言えます。
実験の補足
被験者はランダムに分けられていたため、ゲームの腕前に偏りがあったとは考えにくいです。
ムッライナタン氏らはブルーベリーが少ないという「欠乏」がゲームに対する集中力を促したと解釈しています。
当たり前と言えば当たり前ですが、人は何かが限られるとより物事に集中することがあります。
同じ仕事でも締め切りが近い場合とそうでない場合に実行力が異なるのは典型的な例でしょう。
解説
以上のようにムッライナタン氏らは欠乏が人の集中力を上げる「集中ボーナス」を説いています。
しかし同時に集中ボーナスは良いことばかりではないことも述べています。
何かに集中するということは、別の何かへの集中がおろそかになることを意味します。
そして欠乏による集中は意図的なものではなく、人の無意識に影響を与えます。
人は「明日が締め切りのつもりでこの仕事を頑張ろう」とはなかなか思えないものです。
やはり実際に明日が締め切りにならないと重たい腰は上がりません。
このように、欠乏による集中は意図的にコントロールしにくいものですし、だからこそ人の無意識に影響し時として冷静な判断力を奪います。
明日の締め切りに心を奪われていると、他の大事なこと(例えばパートナーとの記念日のためにレストランを予約する)をおろそかにしてしまいがちです。
このため総合的に考えれば、欠乏による集中ボーナスに頼る生活は好ましくないとも言えます。